おとなりさん。

□7杯目
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先日の騒動に懲りてゴキジェットを備え置いたカフェは、本日も盛況。昨日なんか、地方紙だけど取材が来た。あの新聞買おうかな。
赤司君は最近、緑間君という眼鏡の人を連れてくるようになった。緑間君もコーヒー好きで、話が合う。たまに緑間君が一人で来た時なんか、それはそれは盛り上がった。コーヒー豆をプレゼントしたら、次の日に某有名アイスクリーム店の1000円券をくれた。清志と二人で行った。美味しかった。
そして今日は、
「今日は一人なんだね」
何となく不機嫌そうな赤司君に、いつものコーヒーを出す。ぬるめの無糖でクリームたっぷり。
「何かあった?大学で」
「……何でもありません」
子供みたいにすねる赤司君は、いつもの赤司君とはまた違って、なんだか可愛い。
「素直に言えばいいのに」
「今日はお一人ですか」
「うん。……絶対何かあったね?」
「でも言いませんよ」
「分かったって」
店内には二人だけだった。前の客のカップをタオルで拭き取り、棚にしまう。時計を見つつ、居酒屋でいう“お通し”を出す。
ガチャン、と店の裏口が開く音がした。
「姉貴、ただいま」
「あ、おかえり」
大学のサークル仲間と遊んできたという清志は、ピアスを外しながら赤司君の隣に座った。お砂糖たっぷりのアメリカンを出す。

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