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□赤司くんが嫉妬する
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※中学
×××
「真結っちー!ドリンク下さいっス!」
「うるさい」
一蹴。黄瀬のやかましさがまた一段と増してきたのは、ここ最近のことである。
「真結っち、最近俺に冷たくないっスか?」
「気のせい。つか、これが普通」
「俺、もっと真結っちと話したいんスけどー?」
「やめて下さい、死んでしまいます」
「ひどっ!?」
7月に入ってから、やけに暑い。夏だからってのもあるとは思うけど、暑苦しいこいつがいるせいでもあるのかな。選手みたいに運動はしないマネージャーでも、暑いものは暑い。
「ほら、ドリンク」
「ありがと……、ぶっ」
投げ渡したボトルを黄瀬は受け損ね、自称イケメンフェイスにボトルが命中する。
「ぶはは、ダセぇ!」
「青峰っち……、うるさいっスよ!」
「せっかくのイケメンが潰れるなぁ、おい?ざまあみろ」
「あーもう、二人とも嫌いっス!」
空になったドリンクを回収して籠に入れる。キャプテンの掛け声で、みんなは練習に戻る。さつきが作れないドリンクの粉を掴んで、水道に向かって走った。
ボトルは16、7本。全てを洗い、粉を入れて冷たい水を注ぐ。冷た過ぎても良くない。さつきにこれをやらせると、規定の5倍の濃度になるのだ。
「透けてる」
「うわっ、びっくりした。何?」
「透けてる」
上は白いTシャツ一枚で作業している所に、副キャプテンの赤司が来た。慌てて自分の胸元を確認して、ぎょっとした。汗や水道の水で濡れたシャツに、下着の模様までもがくっきりと浮かんでいる。
「上から何か着ろ」
「えー……、暑い」
「お前ほどの大きさがあれば、青峰が寄ってくる。我慢しろ」
「何それ。……まあいいや、赤司が言うなら」
先ほどの言葉を誉め言葉と受け取り、腰に巻いていた薄手のパーカーを羽織る。今日みたいにインドア練習の時は必要ないけど、外周があったりすると日焼けしてしまう。そのため、いつもパーカーは常備しているのだ。
「あと、黄瀬とあまり絡むな」
「は?」
文字通り、ぽかんと口を開けた。
「見てていらいらする」
「え?」
「透けてるのに気付かないし……、何なんだ、お前は」
ぺしっと、頭を叩かれた。
「痛っ!ちょっと、なんで殴られなきゃいけないの」
「鈍感すぎるお前が悪い」
「……さっきから、意味分かんないんだけど」
「察しろ、馬鹿」
そう言うと赤司は、頭を濡らして行ってしまった。
籠、持ってくれてもいいじゃん!
気が利かない赤司に若干の苛立ちを覚えつつ、2つの籠を持ち上げる。先ほどの言葉の意味をようやく理解し、衝撃で籠を落としたのは、それからすぐ後のことだった。
×××
「ちょっと、赤司ぃぃい!」
「何だ」
「さっきのあれ、どういうこと!?」
「……ああ、あれか」
居残り練習を始めようとした赤司を捕まえる。赤司は少しびっくりしたような表情を見せた後、ふふ、と笑った。こいつ、余裕か。
「別に、言葉通りの意味だが」
「だからその言葉通りの意味が分かんないの!」
「馬鹿か」
「馬鹿ですいませんね、馬鹿で」
緑間が遠くから、心配そうな顔でこちらを見ている。赤司を怒らせないか、ということだろうか。
「何回も言わせるな」
「私は意図が知りたいんです、意図が」
「……真結を好いてるのなんて、俺の勝手だろ」
「え、え?」
目を反らした赤司の表情をじっと見る。耳が赤い。
「妬いたの?」
「うるさい、馬鹿」
「はは、なんだぁ」
さっきのお返しに、赤司の頭を 叩く。
「大丈夫だよ、黄瀬は好きじゃないから」
「……あまり心配させるな」
「分かってますって。ね、今日は遅くまで残んないでね」
「はぁ?」
「一緒に帰ろ?」
再び顔を赤らめた赤司は、照れ隠しのデコピンを放った。

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