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□ドルオタさんとお家デート
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みゆみゆと私、どっちが可愛いかって。聞かれたらそりゃ、絶対にみゆみゆだと思う。相手はアイドルで、こっちは普通の女子高生。そんなの、分かりきってる。
でもね、仮にも彼女の私が部屋まで遊びに来ても、微動だにしないでDVD観てるってどうなんですか。
「みやじせんぱーい」
「……」
「みーやじせんぱいってばぁー」
レンタルビデオが床に山積みになっている。安いからって四時間物を5本借りてきたらしい。特典映像も合わせたらかなりの量になるだろう。これが最後の一本らしいけど、一向に終わる気配はない。
せっかく遊びに来たのに暇を持て余していた。後ろから抱きついても反応なし。
「すいませーん?」
駄目だ、完全にのめり込んでる。先輩がこんな状態になると、なかなか元には戻らない。というか、集中が未知の領域に達した感じ。
「先輩ぃー」
「……んだよ、さっきから」
振り向いた顔と声は心底迷惑そうだった。鼻の奥がツンとする。悔しいから、先輩のグラスのアイスコーヒーを一気飲みする。うわ、甘い。
「おいそれ、俺の」
「あーもう、そんなんだからすぐフられるんですからね!」
「え、何、俺フられんの」
「無自覚ですか、馬鹿!」
女の私には大きいベッドにダイブする。こうなったら拗ねてやる。みゆみゆばっか見てろ。
静かな部屋に、DVDから流れる歌声が響く。
この手のアイドルは最近人気だ。確か大坪先輩も好きだったな。宮地先輩ほどじゃないけど。男臭い部屋の壁には、たくさんのグッズが飾ってある。うちわとか、タオルとか、ポスターとか。
……少しくらい、私との写真とか貼ってくれたっていいじゃん?
頭から布団を被って、ぺたんとベッドの上に正座して考える。うわ、恥っずい。めっちゃ妬いてるじゃん、私。みゆみゆなんかに妬いたってしょうがないのに。絶対、敵わないもん。
なんか、涙出てきたな。
「真結」
「……」
「おい、無視すんなよ」
「散々私のことほっといて、それ言いますか?」
そう言うと、先輩は黙った。DVDの再生は終わったらしく、部屋中に響いていたアイドルソングが途切れる。先輩はため息をついて、私の布団を剥ぎ取った。びっくりして振り向くと、先輩の顔がすぐ近くにあった。
「何、泣いてんの」
「……」
「擦んなよ、赤くなってる」
「だって、先輩が」
「……分かってる」
指の腹で頬に伝った涙を拭うと、先輩は私の頭を撫でた。
「そんなに好きなら、ずっとみゆみゆだけ見てればいいじゃないですか」
「みゆみゆより好きな奴見てちゃ駄目かよ」
「……新しい推しメンですか?」
「違ぇよ」
ベッドによじ登ってきた宮地先輩は、正座した私を包むように抱き締めた。
「みゆみゆと私、どっちが好きですか」
「お前。……なぁ、そんなに妬いた?俺、断然お前の方が好きなんだけど」
「うぅ……」
「まぁ、それはそれでいいけど。可愛いとこあんのな」
身を離した宮地先輩は、ぎゅっと閉じた私の左のまぶたにキスを落とした。それから、私の肩口に顔をうずめ、すんと鼻を鳴らした。
「宮地先輩?」
「このまま」
「へっ?」
「……もう少し、このまま」
妬かせたなら補充しなきゃだろ、と先輩は耳元で囁いた。
「先輩」
「ん?」
「……なんでもないです」
「なんだよ」
  宮地先輩に抱き締められると、すっごい安心するんです。大好きですよ。
私ももう少し、彼氏の趣味を受け入れられる寛容な人にならなければいけない。例えそれが、自分より可愛いアイドルだったとしても。小さなことで嫉妬しない女にならないと。
でも、たまには妬いてもいいですよね?宮地先輩。
×××
『ドルオタな宮地先輩とお家デートで、みゆみゆばっか見てる先輩に嫉妬する』ということでした。2/25付のリクエストですね、ありがとうございました!

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