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□宮地がドンする
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「ん」
待ち合わせ場所に向かおうとした放課後。目の前の角に消えた二人分の人影を視線で追う。両耳のイヤホンを外すと、その声がはっきりと聞こえた。
「……宮地?」
教室に入っていったのは、宮地と女子一名。察するに、告白のために宮地を呼び出したものか。慌てて柱の陰に隠れる。邪魔してはいけないという本能がはたらいたためだ。
「宮地……、あの」
「あ?」
よく見るとその女子は、私のクラスメートで仲のいい斎藤ちゃんだった。モテモテのべっぴんさん。
「あの、私、宮地のことが……」
うわぁ、青春!聞いてるこっちが恥ずかしくなってくるのはなんでだろう。肝心な所は、残念ながら何かの物音に紛れて聞こえなかったけど。そして、次の瞬間、私の体を衝撃が走り抜けた。
「……ありがと」
は?
やれ轢くだの殺すだの連呼する、いつもの宮地はどこへ行った。残酷な堕天使こと宮地が、感謝を述べるだと。
「うん。それで、もし良かったら……」
「いや……、ごめん」
は?
「俺、他に好きな人いるから」
私的には、宮地の好きな人より、宮地が告白を断った方が重大だった。だって、あの斎藤ちゃんだよ?本命以外のチョコが貰えない斎藤ちゃんの、告白を……?
次の瞬間、むくむくと湧いて出てきた感情が声になって溢れ出した。
「そこはOKしろよぉぉっ!」
辺りがしん、と静まり返る。次に聞こえてきたのは教室の扉が開く音と、「……誰だ?」
気付いた時には、全速力で走り出していた。
×××
待ち合わせ場所は、ベタな屋上。待ち合わせというか、何というか。帰りのHRの直後、LINEのこちゃに一文。
[屋上]
事務的にもほどがある。ただ、今となっては相手が相手……。「よう、麻野」
「うぎゃああああ、ごめんなさい!」
何がだよ、と呆れる宮地から3m遠ざかる。
「てかお前、見たな」
「ごめんなさい」
「いや、別に謝れって言ってねぇんだけど」
「ごめんなさい」
「おい」
「……ごめんなさい」
「阿呆か!轢くぞ!」
「わぁあ、ごめんなさい!」
再び、走り出した。階段を一気に駆け下り、角という角を曲がる。宮地も鬼のような迫力を伴って追いかけてきた。
「待てゴラァ!」
「やだやだ、ごめんなさいぃぃ!」
「だから何で謝んだよ!」
「知らなっ……、ぎゃあ!」
「おわっ、ちょ」
階段の最後の一段を踏み損ねて、バランスを崩す。同時に足首を思いっきり捻って、派手にすっ転んだ。尾てい骨の痛みと同時に、全身(特に前側)に異常な圧迫感。目の前は真っ暗。もしかして、もしかしなくても。
「あわわわわ……」
「……悪い」
完全に、押し倒された格好になっている。間近に宮地の顔があって、さらさらした髪が頬に当たる。
「すぐどくから」
「ちょっと待って」
「あ?」
「宮地、顔綺麗だね」
「っはぁ!?」
声を荒げて顔を真っ赤にする宮地が、なんだか可愛く見えてきて、思わず笑ってしまった。
「……何笑ってんだよ」
「別に?あ、今日なんで呼び出したの?」
「あー、それ……。もういいや」
「ええー?」
……まあ、大体分かってるんだけどね。私だってそうだから。起き上がりながら、私は言った。
「ねね、今日二ケツして一緒に帰ろ?」
「あ?」
「いいでしょ?」
ね?と懇願するように起き上がった宮地を見上げる。宮地は頭を掻きながら言った。
「……仕方ねぇな」
「ツンデレだね」
「うっせえ!焼くぞ!」
この後、足を捻って上手く歩けなかった私を宮地がおんぶしてくれたのは、二人だけの秘密。
×××
お、遅くなりましたぁ……!
本当に申し訳ないです。ただただ春は暇しかないのに特に節目の今年は)とりあえず進学出来るからいいもののおっとこの話はおしまい←
宮地に壁ドンか床ドンということで、床にしました。床のほうが密着する気がしません?リクエストありがとうございました!

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