ミルキー×ウェイ

□quinze
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生理痛は相当つらいと、前に聞いた事がある。
何も女の気持ちになろうっていう訳ではない。目の前にそれがいるだけだ。
「うぅ……」
合宿初日のミーティング後の休憩時間の男部屋なんだけど。抱きしめた状態で背中をさすってやると、郁はうめいた。もはや俺達が付き合ってる事は部員に知れ渡っているので、今更ここで抱きしめようと問題はない。
「うぅー」
「そんなに痛ぇのか」
「あうー」
一応持ってきた上着をかけてやると、か細い声でお礼を言われた。
「高尾よ、宮地と掛川の合宿伝説を知ってるか」
「へっ?」
輪になって座る隣二人は田中と木村。そこに、お喋り魔人の高尾が加わっている。
「なんすか?それ」
「お団子宮地もそうだけど、バスん中で居眠りしてた二人のラブラブツーショットと、罰ゲームのキス写真。ちなみにあの時はまだ付き合ってなかった」
「え、え、マジっすか!超見てぇ!」
「ほらよ、これ」
「ちょっと待て」
聞き捨てならない会話が聞こえたもんだから、俺は郁の背中をさするのを中断した。
「見せんな、絶対見せんな」
「押すなよ押すなよ、みてーな?」
「ふざけんな、皮剥ぐぞ!」
まあまあ落ち着け、と向かいの大坪になだめられるが、落ち着く訳がない。
「あとな、最近こいつらが撮ったプリクラもあんのよ。俺この前画像もらった。高尾、見るか?」
「あっ、あざーっす」
「おい田中ァ、何見せてんだ!」
机に乗り上げてスマホを奪おうとしたが一歩遅く、高尾の目に例の写真が写ってしまった。二秒ほどフリーズして、高尾は抱腹絶倒。
「よし田中、ちょっと表出ろ」
「ああん?やんのか茶染め」
「地毛だアホ」
「ベビーフェイスに言われたって何も怖くねぇんだよー」
「ぶっ」
木村が吹き出す。
「……悪かったな、童顔で」
「や、本当童顔だな、宮地」
「お目々おっきいのねー、清志ちゃん」
「田中は一回死んどこうか」
郁がまたうめいた。
「ちょ、木村さん、これ何すかこの写真」
「ああ、これか?……部室で踊ってる宮地」
「おい待て見せろ」
手を伸ばして田中のスマホをぶん取る。確かに俺は踊っている。大坪もだが。
「彼女いるのにドルオタってどうなんすか」
「みゆみゆのどこが悪いよ。むしろ完璧だろ」
「いや、郁先輩とはジャンルが違うじゃないっすか?こっち可愛い系で、そんでこっち……」
高尾が郁の顔を覗き込みながら言う。
「いや、どっちも可愛いっすね」
「じゃあ高尾さ、みゆみゆとマミリンどっちが可愛いと思う?」
「お、大坪VS宮地」
「いや、正直どっちでもいいっす」
郁の髪をすく。さっきから唸らなくなったけど、寝たのか。腰に手を回して、肩に顔をうずめる。
「疲れた」
「お、いいな、そのクッション」
「郁はクッションじゃねぇよー」
「ああ、そろそろ掛川は部屋に戻してやれ、宮地」
「あー?」
一旦身を引き、立ち上がって郁を抱き上げる。「介護みたいっすね」という高尾は無視して蹴っ飛ばした。
「んじゃ、行ってくらぁ」
「あいよー」
「頑張れよー」
「何がだよ」
スリッパを履き、郁の分は手に持った。郁の部屋は、確か一つ下だっけ。よっこらせ。ちょっとずり落ちそう。
階段を降りる振動で気が付いたのか、郁がううんと声を出した。
「おはよー」
「……おはようございます」
「爆睡してた。腹、平気か?」
「……まだ、ちょっと」
でも、大丈夫です。ありがとうございます。
「……良かったわ」
郁の部屋に入って布団を敷いてやり、再び眠りにつくまで。手を繋いで、軽くキスを交わし、隣にいた。
×××
「ちょ、ぶはっ……、目ェでかっ!肌白っ!女子っすかこれ!」
「……殺されるな」
「別にいんじやね?」
いやぁ、さすが“森ガール”っすね!

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