捧げもの

□如月様へ
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今日は姉の大学祭に、母親と妹が1日泊まりで行っていた。
つまり、伊月と(誠凛夢主)しか家にいないことになる。



「…お2人だけで大丈夫ですか?」

「平気だよ!お兄ちゃんもいるし、1日だけだから。」

「ていうか、置いてけぼりなのかよ…。普通ついていくもんじゃねえの?」


授業の合間の休み時間、(誠凛夢主)は黒子と火神に話す。
心配そうな2人に、彼女は大丈夫だと笑顔で返した。


「バスケ部があるからって、私たちは行かないことにしたの。
部活の時間が削られるのも惜しいし、家で自由に出来るかなって。」

「何かあれば言って下さい。」

「うん、ありがとう!……あ、次は国語だね。
今は川柳の授業だから、私すごく幸せでね…!」

「そうだな、ダマレ。」

「神様は 私に希望を 与えてる。キタコレ!」

「伊月ダマレ…。」

「……………。」


今日も(誠凛夢主)は絶好調であった。

























「……え、体育館が使えねえの…ですか!?」

「バレー部の練習試合が今からあるから、どうしてもこのコート使いたいって。
という訳で、今日は部活は休みよ!しっかり体を休めてちょうだい。」


リコの言葉に、残念そうな様子で体育館を後にする部員たち。
それは伊月も例外ではなく、仕方なさそうに帰る準備を始めた。


「…まさか休みだとはな…。仕方ない!帰ろう、(誠凛夢主)。」

「うん。」


チームメイトに別れを告げて、伊月兄妹はのんびりと家に帰る。
その途中にあるスーパーを見て、(誠凛夢主)があっと声を漏らした。



「確か夕飯のおかずないから、このスーパーに寄っていい?」

「そうだったな…買い物して帰ろうか。」


クーラーがかなり効いた建物の中に、2人は仲良く入っていった。
今日の夕飯はカレー。まずは人参と玉ねぎ、それにジャガイモを探す。


「お兄ちゃん、ある?」

「えっと……奥の方から順番に、玉ねぎ、人参、ジャガイモの順だな。」


鷲の目(イーグルアイ)で野菜の場所を特定し、伊月は買い物カゴを持っていく。
肉を選んでくると言って、(誠凛夢主)は肉屋の方へと向かっていった。


「牛肉500gありますか?」

「いらっしゃい!ちょっと待って下さい。」


正確に重さを量ってくれた店員にお金を払い、(誠凛夢主)は兄と合流する。
レジで野菜の会計を済ませると、2人はスーパーの外に出た。



「……雨が降りそうだな。空が暗いし…。」

「でも、傘持ってきてないよ?」

「急いで帰ろう!濡れて風邪でも引いたら………ん?」



ポツリと伊月の頬に冷たい雫が落ち、彼は上を見上げる。
その正体を確認する暇もなく、大粒の雨が容赦なく真下に降り注いできた。


「ひゃっ!?す、すごい雨…!!」

「(誠凛夢主)、走れるか!?」

「うん…!!」


袋を片手に(誠凛夢主)の手を取り、伊月は大急ぎで家へと走った。
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