捧げもの

□如月様へ
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愉快な音楽が敷地内に流れ、小さな子供がニコニコ笑っている。
ここは東京でもかなり大きな遊園地。伊月兄妹はそこに来ていた。


「晴れて良かったね!」

「快晴だな!絶好の遊園地日和だ。」


部活が休みということもあって、かねてより約束していた遊園地が目の前にある。
迷子にならないようにと伊月が差し出した手を、(誠凛夢主)が白く小さな手で握った。


「(誠凛夢主)は絶叫系、大丈夫だっけ?」

「うん、大好き!お兄ちゃんも平気でしょ、一緒に乗ろう?」

「じゃあまずは……あのジェットコースターから行くか!」


目の前の大きなジェットコースターに、キラキラと顔を輝かせる(誠凛夢主)。
繋いだ温かい手を離さないように、もう1度しっかり握りなおした。

























「…あー…!久し振りに大声上げたかな…!」


楽しかったのか明るい笑顔の(誠凛夢主)に、伊月も笑いながら頭をなでてやる。
かなり揺れるアトラクションだったものの、2人とも得意なのか歓声が上がっていた。



「お、メリーゴーランド。まだ乗れるか、(誠凛夢主)?」

「うん、大丈夫!」


ゆっくりとした音楽に合わせて、たくさんの馬が上下に動いている。
並んでいると順番が回って、前の子供たちが一斉に好きな馬へと跨がった。


「お兄ちゃん、乗れそう?」

「んー……。ほとんどの馬は埋まってるかな…キタコレ!!」

「そっかあ…。」

「あれ、(誠凛夢主)?気付いてない?馬が埋まって…。」

「分かってるよ。」


鷲の目を持つ兄に空きを訊ねるも、どうやらほぼ先客がいるらしい。
だが彼の案内する方についていくと、そこには1頭だけ騎手のいない白馬が。


「…ちょっとごめんな、(誠凛夢主)。」

「え……ひゃっ!?」


ふわりと体を抱えられて乗せられ、(誠凛夢主)はすぐ後ろに座る伊月にしがみついた。
全員乗ったことを確認した従業員が、動くようにレバーを操作する。



「わー!お兄ちゃんとお姉ちゃん、ラブラブ!!」

「ねえねえ、2人はカップル?」

「「え?」」


近くの子供たちが興味津々で、伊月兄妹に質問を浴びせてくる。
(誠凛夢主)が真っ赤な顔で否定しようとすると、伊月が彼女をグイッと引き寄せた。


「そうだよ、今日はデート。」

「!?」


一斉に飛んでくる子供たちの冷やかしに、慌てふためく(誠凛夢主)。
柵の外にいた順番待ちの乗客も、微笑ましい光景に可愛いと口々に言い合っている。



「……もう、恥ずかしい……!!」



正面ではなく横向きに座っていた彼女は、顔を隠すように兄の胸に埋める。
落ちないようにと(誠凛夢主)の腰に回された腕が、一段と力を強めて彼の方へと引き寄せた。



『それではメリーゴーランド、まもなく終了となります。
お忘れ物のないよう、お気を付け下さいませ!』

「ばいばい、お兄ちゃんとお姉ちゃん!!」

「お幸せにー!!」



ませた子供たちと別れた後も、伊月の腕の力は緩まなかった。
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