捧げもの
□鈴音様へ
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「よーし、ミーティング始めんぞ!」
昼休みにスタメン&マネージャーが集まり、臨時のミーティングが開かれた。
「いきなりみんなを集めて…どうしたんじゃ、福井?」
「アゴリラも内容知らないアルか?使えないゴリラアル。」
「知らされてないんだから仕方ないじゃろ!!あとワシ、ゴリラじゃないからね!?」
「それで…いったいどうしたんですか?」
泣きながら劉偉に掴みかかる岡村はスルーし、氷室が不思議そうな顔で訊ねる。
その隣では、昼食が満足に食べられなかった紫原が、非常に不機嫌そうな顔をしていた。
「マジありえねえし、何なの?ご飯4杯しか食べられなかったじゃん。」
「いや、お前それ食いすぎだから。」
「(陽泉夢主)ちん、部室にお菓子の余りある〜?」
「ないアル。」
「ないある?どっちなの、それ。はっきりしてくんない?」
「ああ、もう!!話が進まねえから本題に入るぞ!!」
勢いよく机を叩いて注意を引き、実はな…と話し始める福井。
「隣町のデパートあるだろ?あそこにスポーツ用品店がオープンした。」
「それなら俺も知ってます。でも、そこがどうしたんですか?」
「バッシュが欲しい。」
『……は?』
ふざけているのかと皆の心が1つになる。だが福井の目は真剣そのもの。
つまり言いたいことを整理すると、買い物に付き合え…ということだった。
「はあ〜?何それ、行く訳ないじゃん。」
「お前さん、そのためにワシらを…。」
「…すみません。俺たちのメリットが見つからないんですが…。」
「さすがに面倒アル…福井1人で行くアルよ。」
「私マネージャーだから、バッシュのことはよく分からないアル。」
好き勝手に文句を言う仲間たち。だが問答無用!!と意見を遮られてしまった。
今度の日曜日は有無を言わさず付き合わせる。それだけ言うと彼は会議を解散した。
少々不満げな残りのメンバーたちが、会議室に残されていたのだった。
「……おお、マジでお前来たのか。」
「え…他のみんなは?」
さて日曜日、一応決められていた約束の時間に駅前へと向かった劉(陽泉夢主)。
だがそこにいたのは福井1人。他のスタメンたちは皆、集合している者はいなかった。
「…岡村と氷室は連絡がつかねえし、敦はあまり期待してねえよ。
(陽泉夢主)、お前の兄貴は?何か言ってなかったのか?」
「お土産に和菓子を買ってこい、しか…。」
「……………。」
福井の中で仲間たちの、次の部活での半殺しが決まった。
はあ…とため息を吐くと彼はこちらを向き、ご苦労さんと軽く頭をなで回す。
「悪かったな…お前も帰っていいわ。」
「何でアルか?」
「……は?」
意味が分からないと兄譲りの目を丸くし、劉(陽泉夢主)は福井を見つめている。
「…え、いや…だって、お前も面倒だろ?」
「何だかんだで私も暇アル。可哀相な副主将に付き合ってあげるアルよ。」
「……ははっ、生意気言いやがって!」
行くぞと駅の方角へ向かう福井の顔は、どこか嬉しそうに緩んでいた。