陽泉(長編)

□私も一緒に、走ってきていいですか?
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「あーあ、メニューが増えたぜ…。」

「メニュー?学食のアルか?」

「違うわい、練習メニューじゃ。」


体育館の隣にある部室の中で、紫原以外のレギュラー陣はユニフォームに着替えていた。
キツい練習メニューが追加になり憂鬱な顔で、彼らはのんびりと服を脱いで下着姿になる。


「……早くするヨロシ。カントクが怒るアル。」

『うわあぁぁぁ!!?』


何の躊躇いもなくドアを開けた劉名無しさんに、彼らは驚いて上半身を隠す。
兄の劉偉が、慌てて妹に注意した。


「ちょ、ノックするアル!!しかもここ、男子更衣室アルよ!?」

「早くしないと哥哥たちが怒られるから、私が知らせにきただけアル。
それに男の裸なんて、私は興味ないアルよ、女々しい。」


それだけ言い放つと、彼女はドアをバタンと閉める。
ホッと息を吐いていると、再びドアが開く音がした。



「……何アルか、忘れ物でも……。」

「あれー?何か、名無しさんちんに似てる?」

「誰アルか、お前…!?」

「紫原!!」

「敦!?」


眠そうな顔で話す紫原に、岡村と福井が驚いた声を上げる。
その隣で劉偉は、キセキの世代についての話を思い出していた。



「……お前が紫原 敦アルか。私は劉偉アル。」

「わ、名無しさんちんと同じしゃべり方だ。すげー似てる。」

「…それよりお前、ようやく練習に来たのかよ。」

「だって雅子ちん怖いし。名無しさんちんからお菓子もらったからさー。」

「名無しさん、あいつ……餌付けしたアルか……。」

「名無しさんちんからくれたし。」


そんなことを言いながらユニフォームに着替え、紫原はコートのベンチに座る。
劉名無しさんからもらったまいう棒を一気に食べると、彼はよいしょと立ち上がった。



「…よし、全員まずはシュート練習だ。30本入った奴から5分休憩、その後スタメンは外周するからな!」

『はい!!』


返事をしてゴールに向かう部員に混じり、レギュラー陣も次々とシュートを決めていく。


「…劉名無しさん。全員の休憩が終わったら、職員室まで私を呼びに来てくれ。
仕事があったのを思い出したから、ちょっと片付けてくる。」

「明白了(分かりました)。」


そう言って頷いたのを確認し、監督は体育館を出ていく。
20分が経過する頃には、部員全員がシュートを終えて休憩に入っていた。



「…ん?おい、名無しさん。監督は?」

「職員室に一旦戻ったアル。」

「じゃあ外周ないの?」

「残念アルが、始める時に呼びに来るよう言われたアルよ。」


劉名無しさんの言葉に全員、あからさまに嫌そうな表情を浮かべる。
そんな彼らの様子には気付かない振りをして、彼女は職員室へと歩いていった。
























「敦、2周もズルしてるアル!」

「ええ〜?ダルいし面倒だし、もう良くね?」

「何言ってる!走れ!!」

「福井さんは終わりアル。哥哥と岡村さんはもう1周走るヨロシ!」

「「ええっ!!?」」

「あー疲れた…!」


広い学校の周りを5周もさせられては、疲れない者はいるはずがない。
走り終わって座り込むスタメンたちに、劉名無しさんはタオルとスポーツドリンクを渡していった。
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