陽泉(長編)

□Nice to meet you!
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「……お、名無しさんと敦アル。移動教室アルか?」

「哥哥?」

「今から物理教室に行くとこー。」


休み時間に劉名無しさんと紫原が移動していると、バッタリと出くわした劉偉が話しかけてくる。
2m越えの男2人に挟まれて肩身が狭いと感じていると、兄の後ろから1人の男子生徒が顔を出した。



「…Hey, 劉。彼らがバスケ部の…?」

「ああ、妹と1年部員アル。」

「Oh, Nice to meet you!」


左目を真っ黒な髪で隠し、右目の下にはホクロが1つ。
美形とは彼のような人を言うのだろうと、劉名無しさんはジッと考えていた。


「俺の名前は氷室 辰也。今日この学校に転校してきたばかりでね。
それと、バスケ部に入部するつもりなんだ。これからよろしく。」

「ああ…!私、劉名無しさんアル。よろしくお願いします。」

「ふーん……。せいぜい頑張ってね。」


興味なさそうに間延びした声でそう言うと、紫原は先に物理教室に向かう。
ちょうどチャイムが鳴り響き、劉名無しさんも慌てて後を追っていくのだった。

























放課後、用事があって職員室に来ていた劉名無しさん。
すぐに済ませて職員室を出ようとすると、ドアの所で氷室と鉢合わせになった。


「あ、君は劉の妹の…。今から部活に行くのかい?」

「是。氷室さんもアルか?」

「そうだよ、俺は荒木監督にちょっと呼ばれていてね。
実はまだ体育館の場所をよく覚えていないんだ。良かったら一緒に行ってくれないかな?」



もちろんと頷くと氷室と劉名無しさんは、並んで体育館へと歩き出す。
その道すがら彼はバスケ部の様子について、様々なことを質問していった。


「陽泉の戦い方はどんな感じ?」

「ディフェンスはどの学校よりも強いと思うアル。
ただその分オフェンスが弱くなりがちだから、今そこを強化しているところアル。」

「なるほど。あとキセキの世代についてなんだけど…。
休み時間に名無しさんと一緒だった…紫原 敦も1人なんだろう?」


いったいどんな戦い方をするのかと訊ねる氷室に、劉名無しさんはスッと体育館の方を指差す。
ちょうど着いたから実際に見た方が早いだろうと言うと、彼は微笑みながら礼を返してきた。


「おかげで助かったよ。監督や劉の話は本当なんだね。」

「え?何て言ってたアルか…?」

「頼りになるマネージャーってね。」


部室の方に向かいながら氷室は、改めてよろしくと笑顔で言う。
こちらこそと劉名無しさんが返すと、福井が2人の元にやってきた。



「お、氷室…だっけ?とりあえず部員紹介するから、先に着替えてこいよ。」

「はい。よろしくお願いします。」


ペコリと頭を下げて去っていく後ろ姿を見送り、福井は劉名無しさんの方に顔を向ける。


「一緒に来たのかよ?」

「目的地が一緒だったアルし、場所が分からないって言ってたアル。」

「ふーん。あ、ドリンク頼むぜ!」

「分かってるアル。」


福井の言葉に頷いて劉名無しさんはドリンクを作り始めた。
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