イザ×キラ

□day & night 〜after〜
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いつもふんわりとした空気を持つ居心地の良いリビングに、今日は常とは違う緊張感が漂う。



「キラ、行くぞ…?心の準備はいいか?」


「―――うんっ!いいよ!」



ガチン!


「…っ…!」

「痛いか!?」


不安な彩りを帯びて掠れたイザークの声が甘く耳を打つ。


「あ、れ…?平気…だ」


「そうか」

ホッと息を吐いて緩んだ気配につられるように、キラも肩の力を抜いた。


「よし、交代だな。…いつでも来い」


「―――うん」



イザークはそっと目を伏せた。


小刻みに震えるキラの身体と尋常ではない緊張感。ピシピシと空間を切り裂く音が聞こえてきそうな程だ。




「……ぅ〜!…やっぱり怖いよイザーク!」


「ここまで来て怖じ気づいてどうする?!ほら、余計な事考えずにひと思いにやればいい」



「――――わかった…!痛くしたらゴメンね?」


「お前がくれる痛みなら喜んで受け入れるさ」



ふ、と口元に浮かんだ笑みに背中を押され、キラは力強く頷いた。



静まり返った空間にガチン、と響く機械音。


「…痛…い…?」


「――――いや?不思議なもんだな、ちっとも痛くないぞ?」

「入ってる感じする?」


「違和感はないが、じんじん熱いような妙な気はする。

……なぁ、聞かれたら随分と誤解を生みそうな会話じゃないか?」


「え?」

何が?と小首を傾げて眉を寄せ、逡巡したキラの頬にサッと朱色がさす。


「えぇっ!?」

「クックックッ…お前、真っ赤だぞ?そんなんじゃ余計に耳朶が熱を持つ」


じんわりと熱を放つ場所に、イザークのひんやりとした指先が触れる。


薫り立つように桜色に染まった耳朶にはタンザナイトのピアスが小さな輝きを放ち、その存在を主張していた。



「…よく似合っている」


ココア色の髪を指先で掻き分け、象牙色の肌に輝く一滴の宝石にアイスブルーの眸を細め、惹き寄せられるようにそっと唇を落とす。


「お前もキスを返してくれ」

すらりと整った指先が円を描くように優雅に動き、プラチナの絹糸をすくい上げて耳にかけた。

対の宝石に彩られた耳朶を食むようにしてキス返すと、切りそろえられた毛先が甘く頬をくすぐる。



無防備にさらけ出された白い肌。



柔らかくキメの細かい素肌がしっとりと汗ばみ、掌に吸いつく質感に変わる瞬間を知っている―――。


背中や首筋を艶めかしく銀糸がなぞる感触がまざまざと蘇るような錯覚に、キラはふるりと肩を小さく揺らした。


「どうかしたか?」


「な、なんでも…ないっ、その…ホントになんでもない、から…!」


口の中が恐ろしく渇ききっているせいで、紡ぐ言葉も妙にたどたどしい。



触れたい。

触れられたい。


意識を切り替えようとすればする程、身の内に息づき始めた衝動は抑えようもなく高まり、生まれた熱は身体の中心に集まっていく。


「…僕、ちょっと…シャワー行ってくるね!」


「シャワー?さっき使ったばかりじゃないのか?」


「そ…っ…そうだけど、ほら、なんか緊張して汗かいちゃったから」



部屋着のTシャツの裾を両手でぐいぐいと引き下げながら、もじもじと不自然な体制で後ずさりする恋人の姿にイザークはニヤリと唇の端を吊り上げた。


「―――ほう?そうか、ならば俺も一緒にシャワーを浴びるとするかな」


「ええっ?!」


オロオロとあからさまに動揺する姿に愉しむような視線を投げると、ついと指を伸ばして細い顎を持ち上げた。


「あっ…!」



「……どうして欲しいか言ってみろ」

アイスブルーの眸が紫玉を捉え、うっとりと細められる。


「…キラ?」


額に唇で触れられただけなのに、全身の皮膚が痺れたようにザワついてしまう。


「…ん…っ…」



イザークはキラの中心に手を差し入れ、熱く脈打つそこを掌でやんわりと包み込んだ。


「あ…っ!」

不意にもたらされた直接的な刺激に、キラの身体はビクリと跳ねる。



「イ…ザーク……意地悪…しないで…?」


潤んだ紫玉でねだられてしまえば、もはやイザークに拒否権はない。


「――そんなカオされて、俺が冷静でいられるとでも?」



俺が欲しいと、今日こそ言わせたかったのに…MSを降りてもお前には負けっぱなしだ。



「…イザーク?」

「―――まぁ、それも悪くはない」


深まる薄闇が夜の帳を音も無く降ろす。


恋人達は甘い吐息を重ねるべく、どちらからともなくゆっくりと目を閉じた。


◆END◆



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