-Z.A.F.T. RED'S-
□オヤジキラー
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***
《クルーゼ隊、キラ・ヤマト、アスラン・ザラ、至急ブリッジまで来られたし》
「…なんだろ?」
同室者のニコルとラクス・クラインの4Dライブ映像を見ていたキラは、
管制官からの呼び出しに首を傾げた。
扉のロックを開けて通路に出ると、
視界の隅を赤い軍服が掠める。
「アスラン!」
「キラ・・・」
「今の呼び出しって…」
「ああ…心当たりはないが・・・取り敢えず急ごう」
「うん」
ブリッジに上がった2人は、
信じられないものを見るような目で中央のメインモニターを見上げていた。
「キラく〜ん、不自由はないかね?
いやいや赤服がよく映えて見違えたよ〜」
「はぁ…ありがとうございます、ザラ議長」
「いやだなぁキラくん、そんな他人行儀な!
いつものように“パトリックおじさん”と呼んでおくれ?
何か足りない物があったら遠慮なく言いなさい。
アスラン、お前はキラくんの相談に乗ってあげるように。
ではな、キラくんまた連絡するよー」
一方的過ぎる通信はこれまた一方的に切断されて終了した。
「―――えっと…」
「あの方ってもしかしなくてもプラントの最高評議会議長の…」
「パトリック・ザラ氏…だよな、たぶん…」
険しい表情で雄々しくスピーチをする姿しか見たことがないクルーから、
訝しげな声がひそひそと囁かれるのも・・・無理ない話と言えよう。
「父上は相変わらずキラびいきだなぁ」
「―――アスラン、
今のザラ氏を見た君の感想はそれだけかね?」
ひいきレベルはすでに脱しているだろう、と、
ブリッジにいる全員が突っ込みたい気持ちをクルーゼ隊長が代弁する。
「はい、父は昔からキラをとても可愛がっているんです。
キラに会えない日が続くとご両親が不在の時を狙って学校まで迎えに行って、
勝手にウチに連れて帰ったりして。
子供みたいなとこがあるんですよね、お恥ずかしい」
「…そうか…」
仮面で顔の半分は覆われている状態でも、
そうとわかる程にクルーゼの表情は歪んだ。
「まったく!
おじさんの拉致のおかげでうちの両親は何度警察に駆け込んだ事か。
コペルニクスじゃヤマト家は狂言誘拐事件のブラックリスト上位独走だよ。
あげくに、心配だからって発信機まで持たされちゃうしさ!」
「あの頃のキラの可愛さは、犯罪レベルだったから仕方ないよな」
キラはニコニコと悪びれる様子なく隣に並び立つ幼なじみに視線を投げると、
諦めたように短く息を吐いた。
『あいつも・・・大変なんだな』
これ以後、
ヴェサリウス艦のクルー達がキラに向ける視線は、
やけに・・・
同情的になったという。
◆END◆