ディア×イザ

□比翼の鳥
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喉の渇きを覚え、イザークは目を開けた。

身体を起こそうとした途端に全身の節々が激しい痛みを訴え、
秀麗な顔をしかめさせる。

仕方無く視線だけを動かして壁に埋め込まれた時計をみれば、
時刻はもう20時を回ろうとしていた。

熱にうかされて3時間以上も眠っていたらしい。

「具合どうだ?何か飲むか?」

イザークが目を覚ました気配に、
部屋の隅でデスクワークをしていたディアッカがペットボトルを手にベッドへと近づく。
クリアな容器の中、ちゃぷんと揺れる液体に渇ききった喉が反応する。

ディアッカはグイッとボトルを傾けて水を含むと、
仰臥するイザークの枕の横に片手をついた。

「…何をする気だこの色黒」

アイスブルーの冷たい視線に、
ディアッカは口内に含んでいた水を反射的にゴクリと嚥下した。

「イザーク…」

「気に食わんか?貴様のような無礼者は色黒で充分だ!
あんな…誰が見てるかわらん場所で不埒な真似をするな!」

イザークは痛む節々に眉を顰めながらも勢いをつけて身体を起こし、
差し出されたペットボトルを乱暴に受け取ると喉を鳴らして飲み干した。

「悪かった、ついその…これからは気をつけるからサ!」

「その言葉を信じられるほど俺は阿呆では無い」

ギロっとディアッカを睨みつけた時、
来客を告げる電子音が室内に響いた。

イザークが無言でモニターをオンにすると、
そこに映っていたのは小柄な少女。

『隊長!シホ・ハーネンフースです』

「入れ」

扉のロックの解除とともに「失礼します」と入室して来た少女は、
リスのような小動物を思わせる愛らしい瞳をしていた。

「よ、シホ」

「エルスマン……」

「うっわ、露骨にイヤそうな顔してくれるねぇ相変わらず。
ここはオレの部屋でもあるんだぜぇ?」

イザークは片手を上げてディアッカのボヤキを制止すると、
ベッドに起き上がったままシホへと顔を向けた。

「シホ、どうした?」

「あっはい、あの…エザリア様が単身でいらしているそうです」

「…母上が?」

「はい。談話室でお待ちです」

イザークは思わず同室者と顔を見合わせた。

「…珍しいな…事前に連絡も無いままに来艦するとは…」

独りごちて首を傾げると、母に対面すべく身なりを整え始めた。

「おい、お前…熱は?大丈夫かよ…」

「3時間以上も眠ってたからな、かなり楽になった。…行ってくる」


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