一角夢 現代パロディ

□確信した未来
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※恋人/同棲


「日付が変わったな」と思った一角は、女が横になっているベッドに腰掛けた。
彼女は、なにやら本を読んでいるようだった。

「何読んでんだよ?」

渡された本をぱらぱらとめくる一角。

「『大人の心理学』?なんだこれ。」

てっきり小説や訳の分からない論文でも読んでいるものだと思っていたが、
こういうものも読むんだな、と少し意外に思った。

「ちょっと興味があったんで、図書室で借りたんです。退屈しのぎになるかなと。」
「ふーん……お前、俺と一緒にいて退屈か?だったら起きてねーで、さっさと寝ろよ。」
「ははは、そう言う意味じゃないですよ〜。」

横になっていた女は一角のタンクトップのすそを引っ張り、遊んでいる。
一角は何か面白い記事はないか探した。

「心理テストなんかも付いてんだな。」

 お、これなんかいいんじゃね?

一角は左手の甲を上にして、女の前に差し出した。

「なぁ、どれでもいいから俺の指、一本指握ってくれよ。」

女はこの本を読み始めたばかりだと言っていた。
きっとこの記事はまだ読んでいないはずだ。

「なんのテストですかー?」
「後で教えてやるからよ。ほら。」

女は悩みもせずに一角の薬指を掴んだ。

「何で薬指なんだ?」

一角が尋ねると女は「なんとなく〜」と答えた。
その答えを聞いた一角はニヤリと笑った。

「一角さん、どういう結果だったんですか?」
「ふっ、いいじゃねーか。」
「何だったんですか?教えてくださいよ!」
「やなこった。」

 くそ、かわいいな。捕って食っちまうぞ。

「ま、ひとまず俺とお前の未来は決まったようなもんだな。」
「は?どういうことですか、一角さん!」
「さぁ、寝るぞ。明日も部活なんだろ?」

一角は本を机に置き、部屋の明かりを消した。
そして彼女のすぐ隣に横になる。
彼女は納得がいかないように、一角をじっと睨んでいる。

「これからも、俺のそばにいてくれよ。」

仏頂面だった彼女は一角の言葉を聞き、口元を緩ませた。

「もちろんですよ。」


しばらく沈黙があり、一角は思いついたように口を開いた。

「なぁ、今度お前の親に会いに行かせろよ。」
「……いきなり、どうしたんですか?」

突然言われた言葉に、いつもは冷静沈着な彼女でも
さすがに驚いて一角のことを見つめた。

「別に。まだ一度も、見たことねーなと思ってよ。」

二人は付き合い始めてもう三年目になる。
一角もそろそろ将来について考えはじめるようになった。
女も、一角が言いたいことをなんとなく察したようだ。

「……来週の日曜日に、お父さんもお母さんも帰ってくるんです。
その時なら、きっと会えます。」
「そうか、会いてぇな。」

彼女の両親の姿を想像した。きっと、女みたいにきれいな人なんだろう。

「ふっ。私、まだ両親に付き合っている人がいるって伝えていないんです。」
「……まじか。」

いきなり彼氏を連れて来られ、大事な一人娘を
やすやすと彼氏に任せてくれる両親だと一角は思わなかった。
この先が長くなりそうだ。

しかし。


「ずっとそばにいてくれよ。未来の嫁さん。」

「ふふふ。それはどうですかね?」

まだ彼女が一角のそばにいると決まったわけではない。
だが一角は不思議と、この先女と一緒に歩む未来を確信していた。






【確信した未来】...end.




『心理テストの結果』

相手は自分のことをどのように思っているか分かる。
(異性と心理テストを行う場合。)

親指…頼れる相談相手
人差し指…仕事、学校でのいいパートナー
中指…普通の友人
小指…理想の恋人


   ***


薬指…結婚してもいいと思える人

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