弓親夢 短編集
□気になるキミ
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考査期間に入り、一緒に勉強したいとせがまれ彼女の家に来たはいいものの……。
「ねえ、やる気ないなら帰っていい?」
「え〜帰らないでよ〜!私ひとりじゃ勉強できない…。」
駄々をこねているのはクラスメイトの貴女。席が近い為、彼女と一緒になることが多くなった。
「キミと一緒にいる僕が勉強できないだろ!」
「う〜〜ん……。」
このぐうたら女…学校では人当たりもよくて親しみやすかったが、いざ親しくなるとボロが出てくる出てくる。まずこのめんどくさがり性分。全くそりが合わない。
「明日、英語はノート提出だったけどやれてるのかい?」
彼女の表情を見ると、目を見開き固まっている。
「やってない〜〜〜〜〜!!!!」
鞄からノートと教科書を取り出すと貴女は慌てて書き写しを始めた。
思わずため息が零れる。全く、僕が言わないと動き出さないんだから、と弓親は内心思いながら自身も古典のテキストを取り出した。
***
それから無言の時間が過ぎ、外は陽が沈みかけていた。弓親はふと、彼女の方を見た。
ウトウトと目が閉じそうになっている貴女に声を掛けようと思ったが、彼女の穏やかな表情につい見とれてしまった。
(ほんと、のんきな子だな……。)
自分とは正反対の性格故に割り切っているが、気になる。だが不快ではない。
むしろ心地いいと思っている自分がいる。
一角以外でそう思えたのはもしかして初めてかもしれない。
(でも……。)
弓親は貴女の肩にブランケットをそっと掛けた。
窓から差し込む夕陽で頬が赤く染まる。
(見てて飽きないよ。)
...end.