下書き(一角夢)

□入隊篇【短編&小話】
10ページ/10ページ

【手拭い】


暑い日差しのもと、鍛錬を行なっているのは十一番隊の隊員。
晴れであれば外で走り込みや筋肉トレーニングをなどを行う。

既に日が昇り、容赦なくキツい日差しが降り注ぐ。
汗だくになる隊員の中で一際大きな声を張り上げる男…斑目一角だ。

「暑いからってへばってんじゃねーぞ!もっと大きく動け!!」

暑さでバテている隊員に怒声を浴びせ、自身もしっかり筋トレを行う。
男たちの中に一人いる女隊員をチラリと見る。
女も汗だくになりながら背筋を行なっている。後ろで結んだ髪が揺れ、汗が首から胸元に伝い落ちる。

「よーし、一旦休憩!しっかり水分補給しろよ。」

厠に向かう者、水分補給の為に立ち上がる者 各々が動き出す中、女は木の下に向かった。
水を張った木桶に入れた手ぬぐいをしぼり、汗を拭く。
ひんやりしていて気持ちがいい。水筒のお茶を飲む。

「弓親の野郎はどこ行ったんだ?」

腰を下ろして座っている女の隣で立ったまま茶を飲む一角。
女は建物を指を差した。

「日陰で私たちと一緒に筋トレしてる。」

「あの野郎、一人だけ楽しやがって。皆暑い中頑張ってるってのに。」

「一角は笠被らなくて大丈夫なの?ふふっ。」

直射日光で暑くないのだろうか?肌が灼けて痛いだろうに。
現に一角の肌は赤くなっていた。

「あぁ?!今、お前笑ったの聞こえてんぞ。」

クスリと笑った女の声を一角は聞き逃さなかった。
一角は自身の頭の事を示唆されると条件反射で怒る。
日頃やちるに馬鹿にされているからだろう。

「汗拭かないの?」

「あー手拭い置いてきたな。」

頭から汗を流す一角は見るからに暑そうだ。
女は持っていた手拭いを木の桶に入れ、水で軽くゆすぐ。
手拭いをしぼり、一角に渡した。

「気が利くな。」

日頃彼女が使っている手拭いは石鹸のいい香りがした。
顔を拭き、頭、首…上半身と躊躇することなく拭いていく。

「さっぱりしたぜ。ありがとな。」

手拭いを彼女に返そうと差し出すが、女は不服そうな表情を浮かべる。

「汗、しぼってくれる?触りたくないんだけど。」

「あ?悪かったよ…つか軽く傷つくだろ。」

一角もしゃがみ込み、手拭いを木桶の水でじゃぶじゃぶ洗う。

「ほら、これでいいだろ?」

「ん。」

一角がしぼった手拭いを受け取り女はそれを首に巻き付けた。

「明日は手拭い持ってきてよね。木桶に入れといてあげるから。」

「忘れなかったらな。俺のも用意しといてくれてもいいんだぜ?」

「はぁ?甘ったれないで。」


二人の様子を見ていた隊員達は「木桶を共有するのはいいんだな…」と心の中で突っ込みを入れていた。
傍から見ると恋人というよりは兄妹のように見える。

(俺たちも木桶、用意しよう。)

一角と女のやり取りを見ていた隊員達はそう心に決めた。



【手拭い】...end.
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ