ゾンビだらけのこの街で

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私たちがゾンビを倒してる間に、ここはもう隔離エリアになってしまった。そびえ立つ壁が容赦なく立ちはだかっている。


「まだまだ序の口やな?」

「デザートは別腹ですよ」

「……はっ、言うようになったな。泣き虫やったくせに」

「……昔の話はせんといてください」


やっぱり私は泣き虫だったのかと落胆して、ゾンビを倒していく龍司さんの隣で私もゾンビを倒していく。

建物が破壊されていてもっと入り組んだチャンピオン街を抜けて亜細亜街のおこのみ太郎へ向かう。

なんか、チャンピオン街の中でごつい女?に出会ったけど、その人は私の記憶の中から抹消した。

亜細亜街もまあ入り組んでること。神室町は庭も同然だとか言ったけど、こうも崩壊してると道がわからなくなる。

道中で出会った隠れている人たちに道を聞いて、辿り着いた場所に一人の男がいた。どうやら抜け道を知っているらしい。

その人はホームレスで、龍司さんの師匠にたこ焼きの余りもんをもらったと話してくれた。


抜けて出てきた道は、運よくエイジアに近かった。

エイジアまでやってくると、店の外に店長が立っていた。何かあったのかな。話を聞けば、銃を持った連中が来てるとのこと。

二階堂さんたちに間違いない。

その店長さんから手榴弾を受け取り、いざ店内へ。

ピンクの照明がなんかいやらしい。


「……けど、懐かしいな」

「懐かしい? お前、それどういうことや」

「え、あ、いやー……あはは」


笑ってごまかそうとしても、この人には無意味だった。

関西にいた頃は妹みたいに可愛がってもらってたからなぁ。シスコン気味の龍司さんには言いたくなかったんだけど。


「昔……ここで働いてたことがありまして」

「ワレぇ! こんなことするために東京来たんか!?」

「ひぃっ、ごめんなさいっ……あれ、遥ちゃん? 遥ちゃん!!」


ステージの上にはポールに縛られて口がガムテープで塞がれている遥ちゃんがいた。見せたいものってのはこのことか。

私が遥ちゃんを助けるためにステージに上がろうとした時、銃を構えた二階堂さんに行動を制御された。


「お前は……」

「見覚え、ありますやろ? 5年前に会うてるいう話やないですか。この娘は、堂島の龍……桐生一馬の泣き所ですわ」


やっぱり桐生さんはどんな事件にも関わってしまうのか。っていうかヤバイ。遥ちゃんが誘拐されてるってことは、桐生さんが怒ると言うことで。


「どういうつもりや? テツ」

「東城会はもうほっといてもしまいです。せやけど、まだ桐生が残ってる。この娘は、奴をおびきよせる餌ですわ」

「テツ……」

「兄貴、わしと一緒に昔の郷田龍司を取り戻しましょうや。今の近江連合はもうあきまへん。せやけど、わしと兄貴が組めば近江連合も変わる。兄貴はたこ焼いてるような男やないでしょう」


理想の郷田龍司を追いかける二階堂さんに龍司さんがただ一言「くだらんわ」と口を零した。
 
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