ゾンビだらけのこの街で

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私は店の外に出て壁を背凭れにして座り、ただただ祈るだけだった。

龍司さんのガトリングガンの音が聞こえたり爆発音が聞こえたり。しばらくすればその音もやんだ。またしばらくして、憔悴しきった龍司さんが店から出てきた。


「……終わったで」

「そう、ですか……」


かける言葉が見つからない。昔、私が悲しんでいた時に、龍司さんはどうしてくれたんだっけ?

……あぁ、そうだ。何も言わずに抱きしめてくれたっけな。

昔を思い出しながら龍司さんの首に腕を回す。図体はでかい癖に、なんだか腕の中の龍司さんは小さいような気がした。

数分、いや数秒だったかもしれない。龍司さんが首に回っている私の腕をやんわりと外した。


「……いつまで抱き着いとるんや。もう大丈夫や」

「昔、龍司さんがしてくれたことをしたまでですよ」


さて、また手がかりがなくなった。どうしようか龍司さんに聞こうとした時、街の人がヤベえとか言いながら走り去るのが見えた。


「なんや……妙な空気やな……」

「……嫌な予感ほど的中率が高いんですよね」

「よし、確かめたろやないか」


逃げてきた人たちがいた方へ向かう。そこには壁を抉じ開けて今にもこっちに入ってきそうな、大きなゾンビがいた。


「逃げろ! みんな逃げるんだ、走れ!」


自衛隊の人の声によって動けないでいた人たちが一斉に走り出す。私と龍司さんはその場で立ち止まっていた。


「逃げんでええんか? 足、痛いやろ?」

「これくらい、なんともないです」

「そうこなあかん。ワレ、どこまでやるつもりなんや……? テツ!」


大きなゾンビ1体、よく動き回って透明になるという反則技を使う2体をなんとか倒し終えた。

さすがの龍司さんでも疲れたのか、肩で息をしている。


「テツ……テツぅうう!」


急に叫んだ声は、比喩とかじゃなくて本当に鼓膜がやぶけそうなほどだった。


「龍司さん、とりあえず隔離エリアを出ましょう」

「……せやな」


もう残り少ないだろうけど、そこはとりあえず安全だ。ちゃんと策を練って、準備も忘れずに、二階堂さんの居場所を突き止めてから乗り込もう。

遥ちゃん、必ず助けに行くから待っててね。
 
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