ゾンビだらけのこの街で
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「桐生さん、二階堂って男の事は?」
「ああ、こいつからも聞いている」
「なら、話が早い。さっき、花屋が新しい情報を仕入れたらしいんです。行きますよね?」
「古い知り合いと話がある」
「お邪魔ってわけね?」
「悪いな」
「いいのよ。じゃあね、四代目」
浅木さんはそう言ってどこかに行ってしまった。花屋に会うのは二度目だし、浅木さんと久しぶりのガールズトークをしようとしてたのに。
浅木さんと話ができないなら私も新しい情報とやらを聞きに行こう。
「桐生さん。彼女、うちのキャバでナンバー1いけますよ」
どこを見てるんですか、秋山さん。いっつもこれだ。初対面の女の人を見ればすぐにキャバクラって言葉が出てくる。
私も初対面の時はうちのキャバクラで働かないかと言われたもんだ。もちろん、「ははは、冗談ですよね」と笑い飛ばしておいた。
秋山さんと桐生さんと私の3人で花屋の屋敷へ向かう。
「遅えぞ桐生」
「なかなかお呼びがかからなくてな」
「なにか新しい情報が入ったとか?」
「……せっかちだな。金貸しってやつは」
「秋山さんがせっかちなだけですよ花屋さん」
「言ってんだろ。さんをつけるな」
モニターに映し出されてるのは二階堂さんとその隣に座っていた見知らぬ男。
「こいつが……二階堂……」
「ああ。だが、新しい情報ってのは、こっちの男のことだ」
よかった。その情報に期待してここに来たんだから。さすが神室町一の情報屋、花屋さん。
「そいつが?」
「通称DD。日系アメリカ人らしい」
赤い帽子を被った猿を思い浮かべてしまい、余計な雑念を振り払うように頭を左右に振った。
「その筋じゃ名の通った武器商人だ」
「当てましょうか? そいつがゾンビを開発したんだ」
「ざっくり言やあな。本当にせっかちな野郎だぜ」
「あれれ? 怒っちゃいました?」
何も答えないところを見ると、ちょっと怒っちゃったらしい。駄目ですよ秋山さん。人の台詞を奪っちゃあ。
花屋は何も答えないまま次の話を始めた。
アフリカで発見された新種の菌をもとに細菌兵器の開発に手を付けた、と言った。その菌が今や神室町に蔓延ってるってわけだ。
「ヤツは世界中でそのスポンサーを探していた」
「なるほど。そのスポンサーが近江連合の二階堂。近江連合の上も噛んでいるのか?」
「いや、俺の読みじゃ二階堂ひとりだ。東城会つぶしたって、神室町までこのザマじゃ組織に旨みがねえ。私怨だろうな。東城会と、桐生一馬への」
エイジアで会った時の二階堂さんは桐生さんに恨みがあるようなことを言っていた。
たこ焼き屋の龍司さんは嫌いらしい。
龍司さんに心酔していた二階堂さんの事だ。その姿は憧れていた郷田龍司とかけ離れていたんだろう。
……それでもやっぱり、いけ好かないけど嫌いだけど取っておいたアイスを食べられてムカついたけど、嫌々でも私の面倒を龍司さんと一緒に見てくれた二階堂さんの事は好きだ。嫌いにはなれない。
どうにかして昔の二階堂さんに戻せないかな、と考え始めたその時、ゾンビがここに侵入してきた。