ゾンビだらけのこの街で
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瓦礫や燃え盛る車に阻まれながら、大きなゾンビを桐生さんが倒している。そんな時、私は悠長に電話をしていた。
「ほら、前に言ってたじゃないですか。……そうです。今からそこに行くんで、よかったら来てください。はい、じゃあまた」
電話を切ってポケットに携帯をしまう。必死に装甲車を操縦している浅木さんが話しかけてきた。
「今の誰?」
「浅木さんも会ったことある人ですよ」
「私も?」
「はい。ま、着いてからのお楽しみってやつで」
浅木さんは「楽しみにしとくわ」と言って操縦に集中した。
二人を合わせてもいいものか迷ったけど、今の龍司さんなら大丈夫。もし桐生さんと喧嘩しそうになったら、その時はその時。私が止めればいいだけの話だ。
黒鉄ビルに到着した。シャッターが閉まってるけど、浅木さんが関係なしにガンガン叩く。
「どなたかいらっしゃいます?」
またしてもガンガン叩く。
そこに一つの足音が訪れた。ゾンビかと思って臨戦態勢を取る私たち。しかしその必要はなかったようだ。
「現れよったな。桐生」
「龍司……!」
なんだかさっそく険悪なムード。
私はその空気を取っ払うようにわざと明るい声を出して龍司さんに近づいた。
「りゅーじさん。来てくれたんですね」
「ああ。こいつの調子悪うてな、見てもらおう思てたとこやったんや。安心せえ。今はやり合う気ぃないわ」
龍司さんはそう言って黒鉄丸をなおす。“今は”とか物騒なこと言わないでくださいよ。
外の騒がしさに気付いたのか、ガンスミスが中から出てきた。
中に入り、龍司さんは黒鉄丸の調子を見てもらい、浅木さんは興味深そうに義手を眺めてる。
私は龍司さんの隣に座って、メンテナンスをじっと見ていた。
「こんな時に繁盛してんのはウチくらいのもんだろうねえ」
「せやろなぁ。姉ちゃん、見た顔やな」
「あなた、戦車でバリケード壊した人でしょ? 苗字さんと一緒に」
「だからあれは共犯じゃあなくて……」
「アホ。お前もあそこにおったんやから共犯に決まっとるやろが。そかそか、あん時やな」
確かに龍司さんと一緒にいたけどさ。私が龍司さんと出会ったのは、龍司さんがバリケードを壊した後だから。
「苗字さんが言っていた兄のような人ってあなただったのね」
「お前、そないなこと言うたんか」
「どう説明していいかわからなかったんですよ」
「……それにしても……あなたたち、顔広すぎない?」
そのあなたたちには私も含まれてるのか。
「今度はどういうご関係?」
「そこの桐生はな……わしの腕をこないしよった男や」
桐生さんの反応を見た限り、それは本当の事らしい。初めて聞いたときは信じられなかったけど、桐生さんの反応が本当だと語っている。