ゾンビだらけのこの街で
□17
2ページ/3ページ
「名前の言う通り、わかってねえのはてめえの方だ」
「そうかな?」
「人生は過酷だ。そんなことてめえに言われるまでもねえ。生きるってのは、全力でそれぞれの人生に立ち向かうことだ。お前はなぜそれを滑稽と笑う?」
それはこの人が全力で人生に立ち向かうことがなかったからだ。
DDは高らかに笑い、言葉を紡いだ。
「なぜ笑うかって? おかしいからだよ! おかしくて仕方ないじゃないか!」
「笑えねえよ。お前と一緒に笑ってくれる奴なんてどこにもいやしねえ」
「綺麗事だよ。所詮、人間は楽な方に逃げたがる生き物なんだ」
「休んだ方が楽、楽したほうが得……そう思い込んでる連中はどういうわけか、そいつを大声で叫ぶ。仲間を増やしたがる。だが、俺たちは立ち止まらない」
隣にいた龍司さんの手を握る。その手を龍司さんも握り返してくれた。
もう大丈夫だ。万が一でも億に一でも、真島さんが約束を破ったって私は生きていける。まぁ、最後まで信じることは信じるけど。
「そして全力で生きて戦い抜いて……最後に死ぬ時が来たらこう言うんだ。“生きててよかった”ってな」
「ま、そういう理屈もあるだろうね。桐生一馬。二階堂が君に御執心だったのもわかる気がするよ」
そう言いながら背を向けたDDは、やってきたヘリコプターの梯子に捕まって逃亡した。
「くそが!」
「いいんだ」
ヘリを撃ち落そうとする龍司さんを桐生さんが止めた。
「アホ抜かせ!」
「やつを殺るのは俺たちの役目じゃない」
「ああ?」
桐生さんの言葉の意味も分からず、事の成り行きを見守る。途端にヘリが方向転換してこっちに戻ってきた。下を見ると、ゾンビが梯子を上ってきていた。
「おい! どうなってるんだ!?」
ヘリの操縦席から秋山さんが屋上に飛び移ってきた。
やっぱりいいとこドリップ。最後は全部持って行っちゃうんだから。
操縦者のいなくなったヘリは大きな機体を回転させながら下降していく。
「似合いの最期やな……」
「……タナトスに感染できて、あの人も幸せでしょうね」
ついにヘリは墜落して、大きな爆発音と共に大破した。
これで全てが終わったんだ。