ゾンビだらけのこの街で

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ベッドの上で目が覚めて、無意識のうちに隣のスペースに手を伸ばす。いくら伸ばしてもシーツは冷たいままで、私はそっと目を開けた。

「おはようさん」と、脳内で再生させる。こんな日が何日続いたんだろう。

最近は二度寝もできてない。

神室町に行くのは気が引けるけど、今日は思い切ってヒルズの中にある事務所に行ってみよう。

元気にしてなきゃ真島さんに怒られる。そう思ってベッドから降り立った。


「……なにこれ」


変わり果てた神室町を前に、私はただ茫然と立ち尽くしていた。

高くそびえたつ壁。その前に立つ数人の自衛隊。たった数日でこの神室町に何があったのか。いくら考えてもわからない。わかるはずがない。

近くにいた人に事情を聴くことにした。


「あのう、何があったんですか?」

「……ここだけの話、ゾンビが出たって言うんだよ」


ははは、そんなまさか。ゾンビなんてこの世にいるわけ……と思ってみても、こんな大騒動なんだからその可能性は捨てきれない。

私は教えてくれた人にお礼を言ってとりあえず秋山さんを探そうとスカイファイナンスへ向かった。

しかし向かえなかった。


「秋山さんと花ちゃんさん、大丈夫かな……」


携帯に連絡してみても一向に繋がらない。私はタワー前庭のベンチに座って溜息を吐いた。

これからどうしよう。とりあえず立ち止まってないで歩きまくろう。

そうすればばったり道端で会うかもしれない。

淡い期待を胸にゆっくり歩いていると、マンホールが開いてそこから手が出て来たではありませんか!

私は関わらない様に目を逸らして先を急ごうとした。

なのに、あの声に呼び止められて後ろを向いた。


「……え、秋山さん? なんでマンホールから出てきてるんですか?」

「ちょっといろいろあってね」


そう言いながらマンホールから出てくる秋山さん。後ろにはもう一人、どこかで見たことのある顔の人が出てきた。

その人は私を知っているらしい「名前さん、よくぞご無事で」と声をかけられた。

え、え、と戸惑っていると二人は私を置いて会話を始めた。

どうやら花ちゃんさんが壁の向こうで熱と闘っているとのこと。私は渋る秋山さんを言いくるめてついていくことにした。
 
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