ゾンビだらけのこの街で

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オリエンタルビルに到着した私たちは廊下を警戒しながら歩いていた。本当に花ちゃんさんはここにいるんだろうか。

どうかいてください、と願う私の隣で秋山さんが「花ちゃん」と名前をつぶやいた。

次の瞬間、誰もいなかったはずの廊下から物音が聞こえた。

そっちの方へ顔を向ける私と秋山さん。

廊下に置いてあったロッカーが倒れた音だった。別に廊下とロッカーをかけてるわけじゃない。っていうか全然上手くない。

とっさに銃を構えてロッカーに近づく秋山さん。私もその後を追った。


「秋山さん」


そのロッカーから聞こえてきた声は意外な声だった。


「花ちゃん!」
「花ちゃんさん!」


またしてもほぼ同時だった。っていうかそんなところに隠れてたんですか、花ちゃんさん。道理で見つけるのが難しいわけだ。

秋山さんが倒れたロッカーに駆け寄って中を確認する。

そこにいたのは、自分の体型を忘れてしまった花ちゃんさんがロッカーの内壁に阻まれて出られない姿だった。

その姿に、安堵からか笑みが零れる。


「よく頑張ったね。もう大丈夫だ」

「早く出してあげましょうよ」


ロッカーから花ちゃんさんの手を取って持ち上げる秋山さん。勢い余って廊下に倒れ込んでしまった。

私は思わず両手で顔を隠す。


「怖かったです」


そんな花ちゃんさんの言葉に秋山さんも笑みを零す。

途端に、背中に悪寒が訪れた。

ばっ、と後ろを向いて何かいないか確認した。けど何もいなかった。


秋山さんが花ちゃんさんに解熱剤を渡し、それを飲ませた。


「大丈夫だ。熱はすぐに下がる」

「ありがとうございました。名前ちゃんもありがとう」

「いいえ、そんな。花ちゃんさんにはお世話になってますし」


こんなところで長話はできない。秋山さんが「すぐに出よう」と言った。


「歩けるね?」

「はい」


そう言った瞬間、秋山さんの後方から物音が聞こえた。さっきのロッカーが倒れたような音じゃない。

その音に私と花ちゃんさんは手を取り合って小さな悲鳴を上げた。

秋山さんと同じところに目を向けると、そこには真っ赤な壁があり、電灯が転がっていた。
 
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