ゾンビだらけのこの街で
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「よせ。……そんなことしてる場合か」
今ほど冷静な人がいてくれてよかったと思うことなんてなかった。ありがとう六代目。
「ご無事で何よりでした、真島さん。お前も」
六代目はそう言って優しく微笑み、私の頭を撫でてくれた。真島さんの次の次くらいに大好きな六代目。こんな時、真島さんは機嫌が悪くなるけど、自分が一番だとわかってるから何も言ってこない。
ただ不機嫌になるだけ。それでもたちが悪いんだけど。
「……六代目もや。それからええ加減に名前の頭から手ぇ離し」
こんな状況で不謹慎だけど、六代目から私を引き剥がして腕の中に閉じ込められて嬉しいと思ってしまった。
独占欲や束縛が強い人なんて最高じゃないか。
「この一軒で古参の幹部も半数近くやられました。東城会……いや、神室町そのものが壊滅寸前です」
「……みたいやなぁ」
「それと、ひとつ気になる話が」
「ん?」
「神室町中にある東城会系の組事務所。今回の襲撃はそこが発端になったようなんです。つまり……誰かが意図的に東城会を狙ったと」
「ああ。さっき二階堂いう小僧が挨拶してきたわ」
「決まりだ。二階堂のバックには郷田。それに近江連合……」
なんでここで龍司さんが出てくるのかがわからない。
あの人は破門されたって情報がある。それなのにこっちの世界に執着するような人じゃないってことはここにいる誰よりも私がわかってる。
なのにそれを言えないむず痒さ。言ってしまいたいけど、安住さんの前でだけは言いたくない。
どうせ、何か言われるんだから。
「しかし……狙いがウチとして、こいつはもう極道の抗争なんかじゃない。近江がここまでやるとは……」
何が二階堂さんを後押ししてるんだろう。
確かにいけ好かない奴ではあったけど、こんなことするような人じゃなかった。本当に龍司さんを慕っていて、また龍司さんも二階堂さんを本当の弟のように思っていた。
まぁ、私ビジョンなんだけどね。
そんな人が、どうしてこんなことするんだろうか。考えれば考えるほどわからない。