ゾンビだらけのこの街で
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ショットガンを抱えて目を瞑り、紫煙を燻らせていた真島さんが安住さんの言葉で覚醒した。直後に聞こえるけたたましいクラクションの音。
どうやら東城会のお馬鹿メンバーがトラックに乗って突っ込んできたらしい。
「真島さん……!」
「やっぱ東城会はアホばっかりや。大好きやで」
「同感ですよ」
「同じく」
六代目が駆け出し、真島さんも駆け出す。そして私も駆け出した。後ろで応援してくれる女の子の声を聴きながら外に向かった。
トラックが突っ込んだシャッターはもはや意味を成さず、そこから次々にゾンビが入り込んでくる。
「大吾! 人使うて穴ふさげや!」
「真島さんは?」
「わしはな……ちょっと野暮用じゃ!」
「私も野暮用じゃ!」
ショットガンでゾンビを押し戻す真島さんの背中を押して私も加勢する。
「真島さん、名前! 二人とも、囮に……!?」
「そう簡単には死にませんから」
まだまだ真島さんと一緒にいろいろやりたいことがたくさんあるんだ。こんなところで死ぬわけにはいかない。
ゾンビたちの中央に行き、真島さんが叫ぶ。あの女の子が心配そうにこちらを見下ろしていた。
「おう、お前ら! おいしいご馳走やで。かかってこいや!」
バリケードが完成するまでここを死守しないと。
もう少しで完成する、というところで、真島さんに飛び掛かる一体のゾンビ。危ない、と思った時にはすでに遅く、真島さんの腕に噛みついていた。
「くそが……!」
「真島さん!!」
そこにもう一体のゾンビが飛び掛かってくる。それを倒したのは真島さんでもなければ私でもない。
外に出てきた六代目だ。
「真島さん、名前、二人でおいしいとこ持ってく気で? それに名前に囮になられちゃここも終わりだ」
「なんや、今頃気付いたんか」
「気付くの遅いですよ……ってかちょっと、それどういう意味ですか」
やっぱりゾンビに囲まれてるような状況でする会話じゃない。それに真島さんの腕から血が滴って黒の革手袋を血で濡らしていく。
「あ、六代目、……っ!」
そのことを伝えようとした時、真島さんに腕を掴まれた。
「わしは大丈夫や。名前、お前は中に戻れ。今ならまだ間に合う」
「なんで……!!」
「ドアホ! わしも六代目も外に出たら、誰が中の奴らを守るんじゃ!」
「……っ」
今もなお窓から見下ろす女の子。
「お前しかおらんやろ!!」
「っ、はい! 真島さん、どうかご無事で……!」
「わしには勝利の女神がついとるからのお」
掴まれたままの腕を真島さんが引っ張る。そのままの勢いで、触れるだけのキスをした。
「また会おうや、名前」
「約束、しましたからね……」
いつの間にか掴み返していた真島さんの腕を名残惜しくも離して、中に戻った。