ゾンビだらけのこの街で
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「おいこら」
部屋の中に入ろうとした時、奥からやってきた人に声をかけられた。今日はもう誰もいないらしい。
何も私たちは誰かを求めてここに来たわけじゃない。何か情報を掴むために来たんだ。
男はその後、「消えな」と言った。
「なるほどな。つまり、あの赤いマークは全部組の事務所やったっちゅうことなんか」
「ひとりでなに言ってやがる」
「組長に話がある」
命知らずの男は「あ? なに寝ぼけたことを……」と言ってしまい、龍司さんの餌食になってしまった。
首に手を回し、男を軽々と持ち上げる龍司さん。
「さっさと伝えろや。郷田龍司が会いに来たってな」
解放された男は咳き込みながら組長さんを連れてきた。最初からこうすれば、苦しい想いなんかしなくて済んだのに。
「すると、あんたは東城会の敵じゃないってわけか?」
「今はもう極道やない」
「この人は嘘はつきませんよ」
「……あなたが言うなら信じましょう。じゃあなんでわざわざここに? 警告ってのはどういうことだ?」
来る途中に龍司さんから話は聞いた。それに私も元だけど情報屋だ。東城会の組事務所が発端になってることはもう知ってる。
地図にこの場所が記されていたなら、ここも狙われているかもしれない。
「バリケードん中で何が起きとるか、知っとるな?」
「ゾンビで溢れてるって話か? 自衛隊も戦場顔負けに詰めてるし、東城会の幹部連もずいぶん死んだらしい。ただ、それでもまだ信じられん。この目で見ない限りはな」
「心配せんでも、もうすぐ見れんで」
そう言った龍司さんが監視カメラを映す画面に顔を向けた。そこに映っているのは倒れてる男と帽子を被って立っている男。
「来よった。ボーっとしとったら、やられんで」
さすがにやられるのは嫌なのか、エレベーター前の守備を固めて敵に備え始めた。
エレベーターはこの階に向かって上がってくる。
「郷田! おい、どういうことだ!?」
「客に直接聞けや」
「くそ!」
「……あ、来ましたよ」
エレベーター到着を告げる音が、耳に届く。その直後にエレベーターの扉が開くも中には誰もいない、と思った瞬間上から降ってきた。
そしてすぐに襲い掛かってくる。
固めたデスクの上で長い舌を揺らし、組員さんの弾丸を確実に避けていく。今までのより速いな。