ゾンビだらけのこの街で
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「ワレ、そんなことでこないふざけたことしとんのか? 外見てみい! どんだけ人が死んどる? 近江も東城会もないやろが!」
「そら、わしひとりですさかい。東城会つぶすいうたら、手段なんて選んでられまへんわ。せやからこうなったんはわしのせいちゃいまっせ。指ひとつ動かさん近江連合と、兄貴のせいや」
これだけの事をしておいて自分のせいじゃない、なんてどの口が言ってるんだ。
私は向けられたままの銃口を睨んで拳をぎりぎりと握りしめた。
「話にならん」
「交渉決裂、いうわけでっか?」
「交渉なんかあらへん。ワレがひとりでダダこねとるだけや。その子ぉ離すんや、テツ」
「遥ちゃんは関係ないやろ!」
私も龍司さんに便乗してみた。
「まぁだ目ぇ覚めへんっちゅうわけやな」
「目ぇ覚めてへんのはどっちや!! ええ加減、自分のしたこと理解せぇ!」
そう叫んだ瞬間、けたたましい銃声と頬にピリッとした痛みが走った。
「名前!!」
「次は脳天ぶち抜くで、名前」
本当にどうしちゃったんだ二階堂さんは。こんなことするような人じゃなかったのに。
「寝言ほざいとんのはワレだけや。わしの妹に手ぇだしてただで済むと思うなや」
「ほな……兄貴には頭冷やしてもらいますわ」
後ろから突然足音が聞こえだした。後ろを振り向いて誰がいるのか確認する。そこにはたこ三昧のはっぴを着た、おそらく龍司さんの師匠であろうお方がいた。
師匠なのは間違いないようで、龍司さんが「おやっさん!」と言った。
「もう一度考え直しといてください」
「テツ、ワレぇ……!」
二階堂さんが遥ちゃんを連れてここを去る。私はそれを追いかけようとした。しかし、たこのゾンビと化したおやっさんによって阻まれてしまった。
龍司さんもたこの足に吹き飛ばされる。
「おやっさん……わしのせいで、こんな……」
吹き飛ばされた時、足をくじいてしまったのか上手く立ち上がれない。
「……名前、お前は外に出とれ。おやっさんはわしがこの手で……」
こうなった龍司さんに加勢するのは難しい。昔からこうだ。人質取れば怒って、一対一の勝負を望んだり。
そんな龍司さんだからこそ、昔はお兄ちゃんと言って慕っていた。
「……わかりました。外に出てます。貰った手榴弾、上手く使ってくださいよ」
「わかっとる」
私はくじいた足を引き摺って外に出た。