ゾンビだらけのこの街で

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「銃も持たずによく生きてたわね。それにあなた……バリケードを壊した人ね。覚えてるわよ」

「いえ、あれは別に私が壊したわけじゃ……」

「そう言えば、真島の兄さんは一緒じゃないのか?」

「……まぁ、わけあって別行動中です。あの、お名前聞いてもいいですか?」


この話題は、今は避けたい。私は女の人の名前を聞くことで話を変えた。


「浅木。陸上自衛隊3等陸曹、浅木美涼」

「桐生だ」

「苗字名前です」


自己紹介も終わったところで、浅木さんが桐生さんに「あげるわ」と言って銃を渡そうとした。

桐生さんはもちろん受け取るはずもなく、「いや、必要ない」と言って受け取りを拒否した。


「じゃああなたは?」

「私はいろいろ持ってますので」

「そう。……桐生さんは撃てないってこと? ゾンビになった人たちを。気持ちはわかるけど、でも彼らはもう……助けられない。そんなこと言ってたらあなた死ぬわ。苗字さんは今の自分が置かれてる状況を理解してるようだけど」

「いらねえ世話だ。名前、行くぞ」


桐生さんはそう言ってどこかに行こうとした。私は慌てて立ち上がり、桐生さんの背中を追う。

やっぱり誰かの背中を追うことが増えてきた。


「どこに行くの?」

「女の子を捜している」


……そうか。そのことをちゃんと桐生さんに言わなきゃ。謝らなきゃ。


「娘さん?」

「娘も同然だ」

「アテはあるの?」

「いや」

「なら、神室町ヒルズに生存者たちが集まってるらしいわ」

「……あ、話の流れを断って申し訳ないんですが、ヒルズにいた人たちはみんな賽の河原に移動しましたよ。後から来た人たちはまだヒルズにいるかもしれませんけど」


そういえば、長濱さんは今どこにいるんだろう。この騒ぎが治まったら、移動を手伝ってくれたことにお礼を言わなきゃ。

いや、それよりも先に彼が誰なのかを思い出さないと。


「ま、何かわかるかもしれないわね」


行先も決まったことだし、さぁ気合を入れて出発だって時に下から銃声が聞こえた。

さすが自衛隊の浅木さん。行動が早い。銃を持って銃声が聞こえた方に走って行った。やっぱり私はその背中を追いかける。

その行く先から「くそ! 来るな! 来るんじゃねえ!」という叫び声が聞こえた。


「行くわ!」


来るなって言ってるのに行くのかよ! と突っ込みを入れたい気分だったけどぐっと抑える。それに、来るなって言ってるのは私たちに対してじゃないだろうし。

浅木さんに続いて私と桐生さんも階段を下りた。
 
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