ゾンビだらけのこの街で
□13
1ページ/3ページ
地下にいた多くのゾンビをやっつけながら、やっと賽の河原に到着した。そこに極道風の男が待ち構えていて声をかけてきた。
「……よくここまで来られたな。もう大丈夫だ」
「って、え? ……あれ?」
「あん?」
「よ、四代目!?」
「え……えーっ!?」
何かしょうもないコントを見ているようだ。
二人は桐生さんが四代目だと気付いて態度を改め、「失礼しました!」と言って頭を下げた。
あんまり桐生さんの事は知らないけど、そんなに有名なのか。……まぁ伝説の極道なんて言われてるくらいだしね。
「……なんなのよ? これ」
「気にするな」
と桐生さんは言うけれど、気になって仕方ない。
花屋の屋敷に向かって歩き始める。その道中で女の子と再会した。
「お姉さん、無事だったんだね!」
「そりゃもう。貰った飴ちゃんのおかげだよ。ありがとう、おいしかった」
「どういたしまして」
あぁ、小さい子って癒される。小さすぎる子は嫌いだけど。
「おじさんは一緒じゃないの?」
「……、うん。おじさんはね、上で遊んでるの」
「遊んでる?」
「そう。本物のゾンビとやりあえるのがめちゃくちゃ楽しいみたいでさ。君もいるから一緒にここに来ようって言ったんだけどねー」
「えー、残念」
「この騒ぎが治まったらまた会えるから」
「ほんと?」
「ほんとほんと」
「じゃあ、約束!」
女の子はそう言って小指を突き出してきた。私は顔が引き攣らないように細心の注意を払って小指を絡めた。
真島さん、あなたに会いたいって人もいるんですから。約束、守ってくださいよ。
「神室町の人たち、大丈夫かな?」
「ああ、ちょっと様子をみてみよう。遥の事も確認したい」
賽の河原を屋敷に向かって歩いていると、今度は後ろから声をかけられた。相変わらず優しい声色だ。
「桐生さん。名前ちゃん」
「本当に有名人なのね。名前さんも負けず劣らず」
「ははは、いやーそれほどでもありますよ」
伊達に真島吾朗の彼女をやってるわけじゃない。神室町のヤクザ世界ではもう私を知らない人はいないんじゃないかな。悪い意味でも良い意味でも。
……あ、そうか。だから長濱さんも私の事を知ってたのか。いやでもそれにしてはやけに態度が低かったな。
「いつ神室町に?」
「今朝だ。お前は、やっぱり無事だったんだな」
「秋山さんみたいな人ほど最後まで生き残るんですよ。ゾンビ映画のセオリーです」
「ははは、まいったねこりゃ。結構いっぱいいっぱいでしたけど」