ゾンビだらけのこの街で
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最上階へ続く階段をゆっくり上る。
やっと辿り着いた最上階には、ソファに座るDDと、遥ちゃんを人質にとる二階堂さんが待ち受けていた。
「おじさん、名前さん!」
「遥……!」
「はっはっはっ、そうですか。お三方が手、組んではるんやったら、林なんぞには荷ぃ重過ぎますわな」
やっぱり林さんは桐生さんを倒すためにあそこに置かれていたんだ。
「二階堂……」
「桐生さん。こうして言葉を交わすんは初めてですわ。お顔は、よく存じておりましたがね」
「おう。その子ぉ離せや、テツ。そしたら……お仕置きやさかいな」
「ま、ええやろ」
きっと痛いお仕置きですよ。いいんですか。
二階堂さんはドスを取り出して遥ちゃんを縛っていた縄を切った。そして遥ちゃんに「ほれ、おっちゃんとこ行き」と声をかける。
その声色が、子供のころの私が泣きじゃくっていた時にあやしてくれた声色と似ていて、少し涙ぐんだ。
解放された遥ちゃんがゆっくりこっちに向かってくる。
「泣き虫は変わっとらんようやな、名前」
「そう言うお前はえらい素直やな」
「そりゃま、あんたはわしの目標やったお人ですから。決して手の届かん目標やった。そらそうや。ただの人間が龍なんて化けモン相手に、そんなん大それた話ですわ」
一歩一歩、確実に遥ちゃんが近づいてくる。
「せやけど……今、目の前におるんはその抜け殻のただのボンクラや」
「今日はえらいおしゃべりやな、テツ」
「気安いで。郷田!」
本当にどうしちゃったんだ二階堂さんは。ついには龍司さんを呼び捨てにしたりなんかして。
「わしは郷田龍司をこないした東城会を……桐生一馬を見過ごせんかった。桐生さん。わしは話したこともないあんたを殺したいほど憎んどる。せやけど……殺すだけでは足りん」
オリエンタルビルで秋山さんと一緒にいた時に感じた悪寒が背筋を走り抜ける。いや、あの時よりも嫌な気分だ。
とりあえず、いつでも戦えるようにと銃を構える。
「まずは……目の前で一番大事なもん奪ったる」
「遥! 走れ!」
桐生さんの言葉で走り出す遥ちゃん。桐生さんも走って遥ちゃんを迎えに行った。
その時、天井からあの四つん這いのゾンビが二人に襲い掛かった。
龍司さんは黒鉄丸をぶっぱなし、私もそいつめがけで弾丸を送り込む。しかしそのゾンビは二人に覆いかぶさった。
「桐生!」
「桐生さん! 遥ちゃん!」
助けに行こうと近づいた瞬間、聞こえる4発の銃声。ゾンビは呻き声をあげて倒れた。そして宙に浮かぶ。
自分より何倍も重いゾンビを持ち上げるだけでなく、それを放り投げる桐生さん。私は思わず「すげー」と呟いた。
「さすがや」
「……二階堂さんの言う通り、龍なんて化け物には敵いそうもないです」
敵いたくもない。