「いたっ……! 真島さん痛い、痛い……ですっ」


目の前にいる真島さんの顔が、我慢しろと言いたそうに顔を歪ませる。しかし痛いものは痛い。痛さを我慢しなきゃならない人生なんてまっぴらだ!

私は真島さんの腕を掴んで痛い痛いと連呼し続けた。

そしたら、痺れを切らした真島さんが体を離して叫んだ。


「えぇい! お前が言い出したことやろが! ちょっとくらい痛ぁても我慢せえ!! わしの腕の方が痛いわ!!」

「痛いの我慢せなあかん人生なんてくそくらえや!」


これでも我慢してる方なんだ。真島さんにはこの痛さがわからないんだ!

どちらもヒートアップしてしまい、私も真島さんもいつもより口が悪くなる。なんでこんな時に喧嘩しなきゃならないんだ。落ち着けよ私。

いやでも真島さんも悪い。一気にぶすっとやってくれれば一瞬の内に終わるかもしれないのに、この人は私が痛がる姿を見て楽しんでるんだ。


「まだ先っちょしか入ってへんで? こんなんで最後までできるんか? っていうかささったままなのは痛ないんか?」


先に落ち着いた真島さんがゆっくりと私に問いかける。おかげで私も落ち着いてきた。


「今はまだ大丈夫です。動かさなかったらの話ですけど」

「……ほな、もう一気にやるで。覚悟はできとるか?」

「はい。改めてお願いします」

「ここでわしからお願いがあるんやけど」

「何ですか?」

「掴むんやったら腕やのうて体にしがみついてくれへんか。桐生ちゃんと喧嘩した時の傷にジャストヒットしとるんや」

「それならそうと先に言ってくださいよ」


あぁ、それなら真島さんの腕の方が痛かったのかもしれない。

私はごめんなさいと謝って離した手を背中に回した。

そして訪れる痛みに耐えるため目をぎゅっと瞑る。

「行くで」と声が聞こえてその次にブチブチと肉の裂ける音が聞こえた。


「いったぁ……あかん、ヤバい、これはあかん痛さや……っ」

「もうちょいや。遥ちゃんからのプレゼント、つけたいんやろ?」


真島さんのこのセリフで、脳内に遥ちゃんの笑顔が浮かんでくる。その顔が、悲しそうに歪められた。

「似合うと思って……あの、ごめんなさい」

昨日の悲しそうな声がまだ耳に付いて離れない。しょぼんとさせてるのが私だと思うと、こっちが泣きそうになってくる。

実際に泣いてしまったようで、体を離した真島さんが親指で目尻を拭った。


「終わったで。よう我慢したな」

「ありがとうございます。これで遥ちゃんからもらったピアスがつけられます」


沖縄からやってきた遥ちゃんは沖縄で買ったピアスを私に似合うと思って買ってきてくれたんだけど、私には生憎ピアスホールが開いてなかった結果、しょぼんとさせてしまったわけで。

暫くして安全ピンを抜き取り、貰ったピアスをつけた。


「はーい、こっち向いてー。1+1はー?」

「にぃー」


真島さんに撮ってもらった写メを添付して遥ちゃんにメールを送る。


「自分、ほんまに遥ちゃん大好きやな」

「まあ、遥ちゃんは天使ですから」


“わざわざ開けてくれたの? 痛くなかった? でも、嬉しい! ありがと!”

遥ちゃんからの返信メールを見て、私は笑顔を浮かべた。




終われ(^p^)
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