神様はじめました

□神様はじめました
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私が土地神として不甲斐ないから乙比古さんに試された…。

試されてると分かっているのに私は逃げたんです…


私に行く所はありません…。



私は自分の額に空気、と書いた白札を貼り、
何かあるたびに訪れていた公園のベンチに座っていました。


その間にも巴衛は私の学校に1人で必死に探しに行っていたらしいです。



しばらくすると巴衛の狐火であろう炎が会話をしながら何処か行きました。

やっぱり巴衛が私を探しています…。



…ひとりになってしまいました…。

いえ!振り出しに戻っただけです!


、振り出し…



そういえばここで初めてミカゲさんに会った…。





≪誰かぁ〜…≫



≪助けてください〜!

その犬をどけてくださ〜い!≫



≪私の家を譲りますよ≫



≪――…私よりあの家に相応しい≫



≪今まで…何処に行ってたんだ?≫



≪こいつが土地神だと…?

こんなか細い女に何が出来る?≫



≪――…社など別につぶれても良い≫



≪――…あの社は大事な家じゃないですか…っ!≫





大事な家…――




すると近くから女子高生の会話が聞こえてきました。





「今度の土日でしょ?あそこのお祭り!」



「なんていうんだっけ?」



「ミカゲ社…だって!」



「秀君とか鈴木君とか誘おうよ!」



「いいね!いいね!」



「楽しみだよね〜!」



「うん!」





楽しみ…――

楽しみにしてくれている人がいるんですね…。


あそこが…ミカゲ社がわたしの家です…!

自分の家は自分で守りませんと!


私はそう決めて額に貼ってあった白札をはがして駈けだしました。







家に向かうほど瘴気はどんどん強くなっていて…
先程の瘴気とはまた違うものでした…。

ですがここで足を止めることはしません!


どんなに巨大な瘴気でも私が祓ってみせます!






私が社にたどりつくとそこには何かに掴まれている虎徹君の姿が…。





『追い風!』





私は白札に書き、虎徹君の周りにある瘴気を少しでも、と思い投げつけました。





「「朔羅様!」」





それは効いたようで、虎徹君が放されましたが
虎徹君の体が瘴気に触れたせいで黒くなってしまいました。





「朔羅様!」



「お戻りになられたのでございますね!」



『虎徹君っ大丈夫ですか?』





私が虎徹君に触れようとすると虎徹君がさがりました。





「いけません、朔羅様!」



「我らは妖の身でございます故、大丈夫でございますが…

朔羅様がお触れになってはお体に触りになります故、いけません!」



「虎徹…」





隣にいる鬼切君は涙を流していました。





『虎徹君…ごめんなさい、逃げたりして…!

ごめんなさい…!』





私は虎徹君は強く抱きしめました。





「朔羅様!」



「朔羅様!」



「朔羅様!この瘴気が街まで及んでしまったら大変なことになります!

なんとか…なんとか食い止めませんと!」



『はい!お祭りを楽しみにしてくれている人たちがいるんですから…

街は絶対に守ります!』



「「朔羅様!」」





涙を流しながら言った虎徹君に私は先程の女子高生たちを思い出しながらそういいました。



それから私は御神楽の衣装に着替えてきました。

髪をあげてこの間巴衛に貰ったかんざしをつけました。


巴衛が近くにいるような気がして安心するんです…。

すると土蜘蛛が顔を現わしました。


私、虫は無理なんですぅ〜!(泣)





「朔羅!」





巴衛の私を呼ぶ声がして、そちらを見ると
巴衛と瑞希さんが心配げに此方を見ていました。


私は掌に人の字を書いてそれを飲み込みました。
そしてふたりに心配ないと、微笑みました。



鬼切君に神楽鈴を渡されて私は一度、
深呼吸をしてから、必死に覚えた御神楽を舞い始めました。

一度りん、と鈴を鳴らすと温かい光に包まれたような気がしました…。





「朔羅ちゃんの神楽で土蜘蛛が怯んだ…!
朔羅ちゃんの神楽、歪みがないよ…。

何時の間にこんなに…!」



「朔羅様…お美しい…!」



「そして凛々しい…!」



「「うん!」」







「朔羅ちゃん…!」



「ほう!これは美しいですね!」



「ミカゲ…!」







私は高くジャンプをして1番の中で一番頭が混乱した場面に入りました。


右、左、前、左、右、左、右…





「そうだ、朔羅…よく覚えている…

次だ、お前が何時も混乱している所だ。」



『っきゃ…っ!』





私は着物の裾に足をとられ、転んでしまいました。






「なっ…(ここでドジが出るか…;)」



「転んだ;」



「「朔羅様!」」



「ここで?;」





転んだ衝撃で神楽鈴を放してしまって、遠くへ転がってしまいました。

怯んでいた土蜘蛛も御神楽がとまり、土蜘蛛の手が私を襲ってきました。





痛みを覚悟したのですが、肌に優しい風を感じて目を開けると
そこには巴衛が私を庇っていました。

巴衛は手から狐火を放ちながら此方に振り向きました。





『巴衛…!』



「朔羅、」





転んで倒れた時に前にあった手に巴衛がキスを落とし、目をしっかりと合わせました。





「お前は俺が主人として、ひとりの女として認めた娘だ。臆することはない。」





巴衛は強く、だけど優しく、そう言ってくれました。
しかし、土蜘蛛に体を飛ばされてしましました。

飛んだ巴衛は瑞希さんがキャッチしてくれて、そのまま神楽鈴も取ってくれました。





『瑞希さん…!』



「僕も朔羅ちゃんの神楽、応援するよ!」





そう言って取りだした笛に息を吹き込みますが
ふー…とやはり息が抜ける音しかしませんでした。

すると瑞希さんは土蜘蛛に飛ばされてしまいました


私には支えてくれる大事な人達がいます…
私を想ってくれる大切な人がいます…

その人たちの思いをのせて御神楽を舞ってみせましょう…――















「朔羅ちゃん…」



「やはり、私が思った通りの子でした。」



「ミカゲ?初めからこれ想定してたの?」



「さあ?どうでしょう…」





ミカゲはそう言って白く輝く、蝶を飛ばした。

その蝶は朔羅の周りに集まり、その蝶たちは神楽の衣装に映り…
黒地の布にたくさんの蝶が舞った着物へと変わった…――









たくさんの思いを抱きながら私は土蜘蛛に向かって切るように鈴を左右に振りました。

土蜘蛛の瘴気はなくなったみたいで、
土蜘蛛に壊された鳥居や社殿は元に戻っていました…――




























 
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