神様はじめました

□神様、縁をむすぶ
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私は部屋を出て、客間の近くに行くと話声が聞こえてきました。





「――…ただの人間、しかも貧相な小娘が土地神等と…」





やはり、私のことでもめているみたいです…
申し訳ないです…;





「この社も落ちたもんだなぁ?」



「いやいや、朔羅はああ見えて芯の強い娘なのだ。


今朝も早くから熱心に庭にある梅の木に花を咲かせようと昼前、綺麗に花が咲いたのだ。

あとで見ていただければ分かる。


いつか、必ず白札無しでも花を咲かすことが出来よう…。」





巴衛…

これからゆっくりでもいいからしっかりと通力を使いこなせるようにしましょう。


巴衛が恥をかかないためにも…。





「成程!お前はその小娘に顎で使われる腑抜け狐と言うことか。」



「これはこれは、皇女の側近殿は手厳しい方だなぁ。

それを言ってはその小娘にわざわざ挨拶をしに参った主人の立場がないというもの。」



「御託はいい。
さっさとその小娘を連れて来いって言ってんだ。



首を飛ばすぞ、狐…。」





皇女の側近さんはそう言って巴衛に刀を向けました。

…どうしましょう、困りましたね…






「(ふん…宴を切り上げる良い機会が出来た…)


血の気の多い奴だな…仕方ない」





『失礼します、沼皇女様』




私は正座をして客間のまえに座り、そう言って客間の襖を開けました。





『遅くなって申し訳ありません。

先日から土地神をやらせてもらっている姫神朔羅です。』




「「!////」」



『お待たせしてすみません。』





私はそう言って沼皇女さまにむかい頭を下げました。




『そこのお方、どう刀をお納めください。』





私は側近さんの方をむき、再び頭を下げました。

巴衛が刀を向けられてつい出て来てしましたけどいまは巴衛が怖いです…;





「この馬鹿!お前のことだから大人しく待っていると思っていたのだがな…。


なぜ出てきたのだ。お前が出て来てしまったら…
お前のことを守らねばならなくなるではないか。」





その言葉とは裏腹に…
巴衛が堅く握った手は温かく、とても優しかったです…。





「貴様が土地神か…噂通りの美人だな…」




「朔羅のことを下品な目で見ないでいただきたい。」





「(怒)その血肉で償わせてやんよ。

我らが皇女への無礼の数々…」



「悪いが俺も後ろに愛おしい主がいる以上、手加減するわけにいかん。

殺されても恨まないでいただきたい!」





巴衛は爪を立ててそう言いました。

愛おしい?誰のことでしょう…


あ、ミカゲさんですね!

巴衛は意外にに主思いなんですね





「(怒)こっちのセリフだぁ!」



「ガチッ」



「さて、料理してやろう?

朔羅、下がっていろ。」



『は、はい…』





巴衛に言われ邪魔になるといけないと思い、
数歩後ろに下がると側近さんが巴衛に切りかかりました。

巴衛はそれをひらりとかわして振り返りました






「決めたぞ。焼き魚にしてやろう。」



「なに!?」





巴衛は木の葉を側近さんに投げ、それが額に当たると側近さんは魚になってしまいました。

と、巴衛…やり過ぎでは…?;





「ほどよく中火で5分、朝餉のおかずに丁度いい。

どうだ?生きながら狐火で焼かれる魚の気分は…」





『巴衛、その手を放してくださいっ!』





私がそう言うと巴衛は魚になってしまった側近さんをパッと放しました。





『巴衛、やり過ぎです。

そこに座って側近さんと仲直りしてくださいっ』





すると巴衛は座って魚さんのひれを握りました。

あ、握手なのでしょうか…?;





『?素直ですね、巴衛…』



「ほう。これが神使に使う呪縛術、言霊縛りか。」





声が聞こえた方を見ればそこには今まで黙って様子を見ていた皇女さんの姿が…





「そなたが土地神と言うのは、真のようじゃな。」



『言霊縛り、ですか…?』



「朔羅様、神の発する命令は言霊となって神使を縛るのです。」



「強く命令すればするほど強制力も強くなり、神使はその言霊に拘束されまする。」



「鬼切、虎徹のアホ!朔羅には黙っておけと言ったのに!」



『縛り、ですか…』





あまり人を縛りたくはないのですが…

巴衛も自由でいたいでしょうし…。





「あいつは人を縛ることを嫌う。

…あいつの悲しむ顔は見たくなかったのだ…。」





すると俯いていた巴衛の前に皇女様が立ちました。





「神使殿、この者の非礼は妾が詫びよう…
争うつもりはない。

妾は土地神に縁結びの祈願に参ったのじゃ。」



「……」





皇女様のその言葉を聞いた巴衛が顔をしかめたように見えたのは気のせいでしょうか…




『縁結びですか…
聞かせていただいても?』



「うむ…


出会いは一度きり。10年前のいさら沼。

妾は人の子に恋をした。

皿屋敷調の浦島小太郎…
泣き顔のとても可愛らしい8歳の童であった。


あれから人の世では10年…
今では立派な男の子(オノコ)になっていよう。

もう1度途切れた小太郎との縁を結びたい…


だが妖の身では小太郎に会うこともままならん。

朔羅殿、どうか妾の想い、叶えてはくれまいか。」





「ならん。」





皇女様の切実な願いを巴衛が切り捨てました。




「妖怪と人間の恋路は禁忌。

皇女殿も分かっておられるはず…」



「わかっておる。わかっておる…」





『…分かりました。

出来る限りのことはさせていただきます。』





皇女様の想いこがれる姿を見て私は思わずうなずいてしまいました。





「なに!?」





巴衛が驚き、顔を青くさせていましたけど…;





「ありがとう…」





きっと叶わぬ恋。だからこその神頼み…


恋は誰もがするもの。
その想いに人も妖も関係ありません。


後ろにいた巴衛はお怒りのようでしたけど…;


















 










 
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