神様はじめました

□神様をやめる
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「右、左、前、左、右、…
そう、そこで右に回って…そうだ」



『…ここで1番終わりですか?』



「あぁ」



『最初からもう一本お願いします。』





早朝から御神楽の舞の練習をしています。

9番まであるらしいのですがまだ1番がおわったところです…


土地の瘴気を祓い清めるのも土地神である私の仕事です。

ここで御神楽を覚えればこれからの瘴気もきっと祓えるようになるはずです。


太鼓だけではなく、笛もあるらしいのですが今は瑞希さんが練習中です。


いまは音が抜けた音しかしませんけど…;















そして、今日も御神楽の練習です。





「今日は五番まで覚えてもらう。」





朝、練習場に行くと早速巴衛からそう言われました。

昨日やったところまではいいのですが、新しいのに入るたび、躓いてしまいます…

覚えるのに時間をくれるのですが、なかなか上達しなくて…





「朔羅、」



『はい、なんでしょう?』



「手を出せ。」



『?』



「上手く踊らねばならないと思うから緊張する。

緊張するから上手く踊れない。

緊張している時は…こうするといい。
ミカゲ社に伝わる由緒あるおまじないだ。」





そう言って巴衛は私の手を取り、掌に人の字を書き、飲み込め、と言いました。

私はそれに従い、飲み込みました。





「どうだ?落ち着いただろう?」



『はい…!』



「“人を飲む”と言ってな。神という自覚を持つおまじないだ。

これでうまくやれるだろう」



『ありがとうございます。

ですが、私達が子供の時から使ってましたよ?』



「…休憩終わりだ!」





私が何か無神経なことを言ってしまったのか巴衛が怒ってそういいました。












その様子を1人の人物が見ていた…





「姫神朔羅、17歳。
容姿、運動能力共にS、霊力、通力共にA。

ふぅん…なかなかいいみたいだけど…
何処か抜けているみたいだし…。


どうにもあの小娘に土地神が務まる気がしないわぁ。
ミカゲくんの眼鏡も曇ってたんじゃないかしらぁ」



「曇ってませんよー。」



「ひっ!?吃驚、いたの!?御影君!」



「いましたよ。あの子は僕の見込んだ娘です。」





ミカゲはそう言ってメガネをかけ、蝶になり飛んでいった。





「うふふ…じゃあ最終テスト、いってみる?」


























『右、左、前、左、右…右に回って…』





私はひとりで練習場で一番から通しで練習していました。





「運動能力がSなだけあってなかなかいいんじゃなぁい?」



『え、あ、ありがとうございます。

え、と…確か風神の乙比古さん、でしたよね…?


こんな格好ですみません。

ミカゲさんに変わり土地神をやらせてもらっている朔羅です。


あの…ミカゲ社になにか…?』





私1人しかいないはずなのにいきなり話しかけられて驚き、
そちらを見ると風神の乙比古さんがいらっしゃいました。

私は咄嗟に正座をして頭を下げて出来るだけ失礼のないように言いました。





「礼儀もなかなかねぇ。

ミカゲの名前で祭事をするからには、試させてもらうわぁ。


貴方が本当に土地神の仕事がこなせるかどうか」





そう言った刹那、そこには乙比古さんの姿がありませんでした。

その後すぐに外から瘴気を感じて襖を開けると
そこには先程までの面影を残していない、荒れ果てた社の姿がありました。


昨日までは何もありませんでした。

先程の乙比古さんの言葉を思い出して





≪ミカゲの名前で祭事をするからには、試させてもらうわぁ≫





私を試すものなのでしょうか…

私は着替えて、白札を持ち再び外に出ました。


浄化、と書き手水舎に飛ばしても少ししか効かなくて
美化、などと言葉を変えても一時的にしか効かなくて…


白札を使い果たす頃には私の体力も限界で…





「朔羅!」





私が座り込んでいると、外の異変に気付いたのか巴衛が駆け寄ってきました。





『巴衛…ごめんなさい、巴衛…

祓おうとしたんだけど…』




私がそこまで言うと巴衛は何も言わずに私を抱き上げました。





(確かに此処一帯の瘴気は俺が先程いた所よりだいぶ薄れている…)




「朔羅ちゃん!大丈夫!?」



「瑞希、祓えるか?」



「えぇ!?無茶言わないでよ!やってみるけど!」





















 






 
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