―班長の憂鬱―
俺はリーバー・ウェンハム。
黒の教団本部で働いている。一応科学班の班長だ。
班長だから、というわけでもないが、俺は宜しく残業4日目だ。
この研究が終われば寝れる、この書類を書き終われば寝れる、と騙しだまし4日目に突入したが、そろそろ限界だ。
この化学式を解き終わったら、ついに仮眠するつもりだ。
ほら、もう終わりが見えてきた。
これで何も邪魔が入らない限りは、仮眠室だ。
最後の一文字を書き終え、ペンを置く。
結果をまとめるのは後でもいいから、邪魔が入らないように、さっさとおいとまするか。
机の上を簡単に整理して席を立とうとした時、部下のジョニーがいつもの調子で俺を呼んだ。
諦めて溜息一つ吐き、長い用事じゃなけりゃあいいな、と祈りながら、なんだ、と返す。
「室長がエントランスに来てくれと。何かお客さんみたいで。」
こんな時に客か。
服は今日変えたばかりだから、とりあえずは、顔だけどうにかしなければ。
一旦部屋に戻って身だしなみを整え、エントランスへと急ぐ。
階段を降りた所で、室長が大きく手を振った。
その爽やかな笑顔が何か憎らしい。
室長が紹介したのは、なんというか、殴りたくなる顔の男だった。
背は俺より20センチくらい低くて、金髪はサラサラヘアーの刈り上げ。
鼻は低くて団子鼻。目は変に垂れているのに、身なりだけは良い。
いかにも俺は金持ちです、という鼻にかけた態度で、徹夜4日目の濃厚な隈を目の下に持つ、いかにも見すぼらしいだろう俺を侮蔑するかのような目で見てくる。
何故かこの男、教団に多額の寄付をしてくれるらしい。
その代わりに教団本部を見学させろ、とのことだった。
それぐらいあんた一人でやってくれよ、と思ったが、喉の奥に仕舞いこんで、自己紹介を済まし、先頭を切って歩き出す。
「失礼のないようにしてね。」
耳元で聞こえた声に、苛々を募らせながらも、分かりました、と上ずった声で答える。
初めに研究室、医務室、食堂と案内していく。
元々来客が少ないためあまり多くはないが、こういうことには慣れていた。
気になったのは、あの男の隣に張り付いている、黒人の男だ。
恰幅がよく、筋肉が隆々としているのが服の上からも分かる。
おそらくボディーガードだろうが、こんな男が護衛につく、このちんちくりんな金髪は何者なのだろうか。
殆ど回り終えて、そろそろ解放されるかと思った時、ずっと黙っていた金髪が口を開いた。
「エクソシストはいないのですか?」
怪訝に思いながらも、
「エクソシストは多忙ですからね。あまり本部にいることがないんです。」
と返すと、丁度廊下に任務帰りの、青い髪の女性が見えた。
あの娘がそうですよ、と指差した瞬間、金髪が両手を広げて、まるでドラマのワンシーンかのように、彼女に向かって駆けていった。
まいだりーん、とか言っていたのは気のせいだろうか。
念を押しておくが、それは瞬間だった。
決して、殴りたくなるような顔だからって、実際に暴力を振るっていいわけではない。
彼女は男の胸に、綺麗に肘鉄を食らわした。
床に崩れる金髪を見つめる彼女の顔は、無そのものだった。
いつもありがとうございます。
そして、いつもいつも話が長くなってすみません。
一応2、3話くらいの続きものです。
今回主人公全然出てなくてすみません。次はバシバシ出ますので。
よかったら、見てやってください。