ぷよぷよ(健全)

□レムレスのケーキ
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その日、シグはいつものように虫取をするためにナーエの森に向かっている最中だった。
「おーいシグ〜。」
聞き覚えのある声に呼ばれ、振り向いた先に居たのはアミティだった。
「やぁ、アミティ。どうしたの?」
「実はね、さっきレムレスに会ったんだけど、」
「嫌な予感しかしない。」
「新しいお菓子を作ったから食べに来ないかって」
「行かないと伝えておいて。」
シグは踵をかえしてナーエの森に足を進めた。
「えっ!?ちょっと、どこ行くの!?」
「虫取のためにナーエの森に行くの。」
「お菓子食べないの?」
「レムレスの家に行くの…?」
シグはあからさまに嫌そうな顔をした。
元々レムレスの事は嫌いでは無いものの、少しの苦手意識はある。そんな人が多いと思われるレムレスの家に行くというのは、シグは遠慮したいわけで、というかそろそろ本気で虫取がしたいシグにとってお菓子もどうでもよくなってきていた。
「そっかぁ…。シグは行かないのかぁ。」
アミティが残念そうに呟いた。
「え…?」
シグが足を止めて振り替えると、アミティは少々俯いていた。
「アタシは行こうと思ってたんだけどなー。」
「!?」
レムレスを『お菓子をくれるちょっと怪しいお兄さん』として認識しているシグにとって、アミティの発言は少し衝撃的なものだった。
「えっ…?生きて帰ってこれるの…?」
「シグは一体レムレスを何だと思ってるの!?」
シグは動揺して、レムレスをただの危険な男として表現してしまったようだ。
「そんなに心配してくれるなら、シグも来てくれれば良いのに。」
「う…。」
(それはそれで危険な気がする…。でも!!)
「解った。行こうか。」
(アミティを死なせはしない!!)
真面目な話シグは一体レムレスを何だと思ってるのだろうか。
「ホント!?わぁい!!じゃあ、早速行こうよ!!」
アミティはとてもハイテンションになっていた。

「どんなお菓子かなー。楽しみだね!!」
「うん…。」
正直、お菓子がどうとか今のシグにはどうでも良い、10年後の天気よりもどうでも良いことだった。
「…元気無いけど…。どうしたの?シグー?おーい?」
「いや、どうもしないよ。」
普段、レムレスはお菓子を皆に配って回っている。
そのレムレスが家に呼ぶというのがシグには気になって仕方がないのだ。
「う〜ん。考えれば考えるほど解らない。」
普段頭を使わないシグには難問過ぎた。

「来てくれたんだ!!二人とも!!いらっしゃい!」
チャイムを鳴らすと一秒足らずでレムレスが飛び出して来た。
「テンション…高いね。」
引き気味のシグと、
「お菓子、どんなの!?」
と、目を光らせてレムレスに負けないくらいテンションの高いアミティ。
はたからみたらお出掛け大好きな彼女と、家でゆっくりしていたいのに引っ張り回される彼氏にしか見えないことだろう。見ているのがレムレスだからそんなこと考えもしないだろうが。
「お菓子を食べに来てくれたんだね!!ゆっくり食べていってよ!!」
「わぁい!!」
満面の笑みのアミティ。
「…。」
不安を隠しきれないシグ。
「本当はね〜、いつもみたいに皆に配って回りたかったんだけど…。」
「!!」
それだァそれが知りたかったんだよォみたいな表情のシグに些か驚きつつもレムレスは続けた。
「大きくて持ち運びしにくいんだよね。」
「…は?」
普通に考えれば寧ろそれしか考えられないであろう答えでも、色々あーだこーだ考えていたシグには十分拍子抜けだった。
「ほら。」
そこに置かれたのはケーキだった。
「ケーキ?」
「そう。」
それも、ただのいちごケーキだ。
「ま、これはおまけでしかないんだけどね。シグくんにはもっと別の物があるよ。」
レムレスは含みのある言い方でシグに笑いかける。
「…嫌な予感。」
これと言って具体的ではないが、とてつもない不安感、気分の悪さがシグを包んだ。
「これなんだけど…。」
コロコロとカートのようなものに乗せられて運ばれてきたのはシグの身長ほどもある、
「こっちがシグくんに見せたいもの。」
「…これは?」
「ウエディングケーk」
「帰る。」
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