▼エレリ

□愛しきその手の温もり
1ページ/4ページ


「リヴァイ部長っ!」



マフラーを口許まで引き上げて佇む俺の目の前に現れたそいつは、犬さながらに尻尾を振り乱しキャンキャン鳴きながら駆け寄ってきた。
星の輝く寒空の下。犬もといエレンは白い息を吐きながらお待たせしました、と呟いた。俺が到着したのはほんの2分前のことで、別にそこまで待ってないと言うとにっこり微笑んで俺の手を取った。



「じゃあ行きましょうっ」



俺の手より遥かに温かいエレンの手に包まれて、それをカイロが入ったポケットにすっぽり収められると二人並んで歩き出した。

―――エレンは俺の部下である。
何ヶ月か前にいきなり告白されて、そのときは俺もなにがなんだか解らなかったが、まぁ色々あって今はめでたく恋人同士という関係にある。勿論俺もエレンを慕っているというカタチであるが、それは追々話すとして…。
3日程前だったか。仕事の帰りにエレンから初詣へ一緒に行かないか、と誘われた。
初詣なんて、もう何年も行ってない。独り身だった俺は誰かと行く気にもなれず、かといってひとりで行くのもなんだか気が引けるものがあるしで、ましてや人に誘われるだなんて。久しぶりで。恋人と行くことなんて初めての領域だ。断る理由も特になく、エレンの誘いに了承した。

そして現在に至る。鳴り始めたばかりの除夜の鐘が静かな歩道に鈍く響き渡る中、成人済みの大人二人が若い恋人たちのように歩いているというのは。最初こそは気にしなかったものの、神社に近づくにつれて人が増え、俺たちをちらちらと見てくる輩も増え始めた。笑うヤツこそいなかったが、それが逆に恥ずかしい。
エレンはなにも感じないのだろうか。見上げた年下の恋人は、なんというか。何食わぬ顔で今日冷えますねーだなんて呟いていた。
気づいていないのか、この空気なんかよりも冷たい周囲の視線が!鈍感にも程があるぞ。
肘でエレンの脇腹を軽くつつき、ん?と見下ろしてくるエレンに顎をしゃくり周りを見るよう促したところで漸く気づいたのか。顔を仄かに朱く染めて俯いてしまった。
不覚にも可愛いとさえ思えてしまったこの年下の恋人は。逃避行でもするかのように俺の手を引き小走りに駆け出した。

お前…それじゃ逆効果じゃないのか?
逃げるということは、周りに俺たちはそういう関係ですと暴露しているようなもんじゃないのか?
その証拠に、ほら。ついにクスクスと笑い出した声が俺の耳に届いたのだが。
聞こえているのかいないのか、エレンはただ真っ直ぐに神社へ向かって俺の手を引き続けた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ