▼エレリ

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第一章▽平和的日常



―――ジリリリリリリリリリリッ!!

朝、いつもの目覚まし時計の鳴き声で目を覚ます。柔らかな羽毛布団から顔半分と右腕だけを出して声の主を手探りで探す。カタン、指先が硬くて冷たい固体に触れて殆ど衝動的にそれの真上にある突起を押すとパタリと鳴き止んだ。今日もしっかりと目覚まし時計としての職務を全うしてくれた。
チッ、チッ、と大人しくなった時計に組み込まれた針の指す数字を一瞥して、欠伸を零しながら上半身を起こした。
まだ霞む目を凝らして部屋中を見渡せば、カーテン越しの空の色はまだ青く、太陽が顔を出す気配は微塵も感じられない。当たり前だ。今は5時30分なのだから。

顔を洗いに行くためにベッドから足をおろす。春と言えどもまだ朝夜の体感温度は低い。ひやりと冷たい床に思わず足裏が痺れてしまいそうだ。まあこれも毎朝のこと。
多少怯みながらも伸びをしながら洗面所へと向かう。未だ寝ぼけ眼のまま捻った蛇口の先から勢いよく流れ出る水は床よりも冷たく、リヴァイの意識を覚醒させるには充分過ぎた。

洗面台の隣に取り付けられたハンガーにかけた白いタオルで顔を吹いて、自室に戻りジャージに着替えて朝のランニングへ向かう。
自分の現住所であるマンションから1キロほど離れた場所に位置する小さな公園を折り返し地点に、往復で約二キロを毎朝走るのだ。

これがリヴァイの日課。毎日欠かすことのない運動。

別になにか部活動に所属しているわけでもないのだが、健康のため、体力向上のため、そう言ってしまえばそれまでだ。そもそも理由なんて必要としていない。
毎朝1時間程度のランニング。空の青い光りに透かされた桜は紫に色づき、舞い散る花びらはなんとも神秘的だ。走る度に足許に落ちた花びらがふわりと浮いてはまた落ちていく。
この時間帯に外へ出ている人間は、勿論ではあるが自分だけではない。
この辺りの桜並木は美しいからだとか、最近になってシンプルなデザインだった街灯が現代的なデザインのものに変えられ、歩道を更に幻想的なものへと変化させたということもあってか、通常の通りよりも人の通行量は多い方だ。
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