▼エレリ
□愛しきその手の温もり
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「…もー、知ってたんなら最初から言ってくださいよぉぉ」
「やっぱ気づいてなかったか」
「あうぅー…めっちゃ恥ずかしい…」
境内に入ったところでエレンの手が離れていった。少し……いや、かなり名残惜しい気もするがさっきのような目にあうのはごめんだ。なにより、俺よりエレンの方が恥ずかしくて耐えられんだろう。俺はというと、恥ずかしいのは同じだが、周りに気付かれない程度に目立たずこっそり握っているくらいならいいと思うし、できることなら勿論したいに決まってる。だが意外にもチキンだった俺の恋人は、たぶん、家に帰るまでは無理だ。
そんなチキンだが、俺をリードしようと頑張る姿は微笑ましいもので。大きな鳥居を貫いた長蛇の列の最後尾までコートの袖口をちょん、と摘んで誘導してくれた。そんなことしてくれなくてもひとりで行ける、そんなの解ってるが、こんな些細なことでもちょっぴり嬉しくなってしまうんだ。どこからかふわふわと降ってきたこの雪が俺の火照った頬を冷ましてくれると信じている。…やっぱりいい、前言撤回。寒いからこのまま暖かさを保っていたい。
…正直、さっきまでのエレンの手が恋しい。
必死に体温を保持しようと腕を抱きながら小刻みに震える俺の頭上から雪と共に白い息が降ってきた。
「…リヴァイ部長?寒いんですか?」
「ん、あぁ……ちょっとな」
「手ぇ出してください」
「手?……ほらよ」
家を出て少しして気づいたことだが、バカなことに手袋を忘れてしまっていた俺の手は触れた人間全てが凍てつく程に冷たくなっていた。カイロでもくれるのだろうか、エレンに向けて手の平を向けて差し出すと、違ったらしい。反対にして、と言われたので大人しくそれに従ったら。赤く悴んでしまった俺の指先がそっと温もりに包まれた。それだけでは飽きたらず、俺の手を白く染めるかのようにハーッと息を吹きかけ吹きかけ、両手で挟んでは擦り、また息を吹きかける。
「おい、エレン!んなことしたらまた…」
「貴方が寒がってるのにそんなの気にしてられないです」
「――ッ!……この…バカ…っ」
俺の罵倒なんてもはや耳に入らないと、冷え切った手を温めることに専念して白い息を吐き続けるエレンが。恋しい。