▼エレリ

□雪の中に咲いた花
1ページ/4ページ

帰り道、俺とリヴァイ部長は手を繋いで帰った。恥ずかしいのにはかわりないけれど、それ以上になんか幸せなんだ。
まだちらちらと雪が降る中、俺は甘酒、部長は缶ビールを片手に歩道の隅に寄って歩いて、雑談を零す。



「そいえばリヴァイ部長、いつの間にビールなんて買ってたんですか」

「お前が甘酒並んでるとき」



あぁ、そうだったのか。
途中いきなりどこかに消えていきなり戻ってきてびっくりしたんだ。なにか一言言ってくれればいいものを、だなんて考えても今となっては後の祭りだからと言葉をぐっと呑み込んだ。

最初リヴァイ部長が甘酒に渋ったのは並ぶからだったらしい。そんなことを言ったらお詣りなんてもっと嫌だったんじゃないかとは思ったが、それは言わないことにした。俺の甘酒呑みたいアピールをことごとく交わしまくってたのに、何故か参拝が終わったら自分から甘酒売り場の方へ歩いていったときは何事かと。
なにが部長を動かしたのか解らなかったしそりゃあ驚いたけど、やっぱり嬉しかった。
俺を置いてどっか行っちゃうし、かと思ったらあっさり戻ってくるし、それでも文句ひとつ言わずに俺の我が侭を聞いてくれるこの人は、俺には勿体ないくらいに、優しい人。
繋ぐ手をきゅっと握ると指先に軽く力を入れて握り返してくれる。可愛い、可愛すぎる。アルコールが入って微かに上気した頬とか缶の縁に添えられた唇とか。すごく綺麗で俺の劣情を煽…いやいやいや、道端でなに考えてんだ俺!
ちょっとだけ缶ビールになりたいとか考えてしまった自分が情けなくてしょうがない。
除夜の鐘は人間のあらゆる煩悩を消し去るものだと昔から聞かされていたが、絶対嘘だ。今の俺の脳内は煩悩塗れだ。しょうがない、部長曰く俺は一年中発情期の犬らしいからな。
そんな犬畜生はどうにかして己を満足させて煩悩を取り払おうと必死になっていた。



「部長、甘酒呑みます?」

「あ?あー…甘酒苦手なんだ。酒粕がな…どうも好きになれん」

「へぇ、意外」



そうか?と呟いて部長はビールをグビッと仰いだ。
なんだ、甘酒とかこういうの結構好きそうかと思ってたのになあ。やっぱりまだ部長の知らないとこ、いっぱいあるんだな、と改めて考えさせられた。部長はゆっくり知っていけばいいと言ってくれたが、生憎俺にはそんな大人な余裕はない。若者はせっかちなのだ。俺の知らないリヴァイ部長がいるってだけでもどかしくなる。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ