▼企画
□いつか見た光景を
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人類は、100年の呪縛から解放された。
長年の調査兵団の活躍により、この世界から巨人はほぼ全て駆逐されたのだ。
彼は知っていた。
いつか、この日が来ることを―――。
「エレンが……死刑、だと?」
「……そうだ…」
「どういうことだエルヴィン…なんで、なんでエレンが」
「落ち着けリヴァイ」
「これが落ち着いていられるかッ!!」
「リヴァイ。お前も解っていたんだろう?」
「…それでも、エレンは、人類に貢献したじゃねえか…なんで殺されなきゃなんねんだ…」
人類の勝利後、最も悩まれたのは、エレン・イェーガーの存在についてだった。
人類勝利にエレンは大きく携わり、一時は英雄だ救世主だと騒がれていた。
しかし、巨人が駆逐された今、人類が彼に向ける感情は、不安と恐怖のみ。
「…解るだろう?彼を、エレンを恐れる者が多すぎたんだ。この世間に渦巻く不安を取り除くには、こうするしかない」
「…アイツには、まだ…未来があるだろ?その未来を俺たち大人が奪ってどうする」
「リヴァイ」
「若すぎる。アイツが死ぬには…まだ…ッ」
「リヴァイ!」
堪えられるわけねえだろ…!
リヴァイは部屋を飛び出し、その足は自然とエレンのいる地下室へと向かっていた。
―――
「…エレン、俺だ。入るぞ」
「?どうぞ」
珍しい、兵長が了承を得てから部屋にはいるなんて。
重々しく扉が開き、鉄格子を開けてリヴァイはエレンの方へ歩いてくる。なにやら深刻そうな顔をして。
「どうしたんですか?そういえば今日は団長が来てたんでしたっけ」
「…エレン…」
「…はい?」
リヴァイの顔が歪んだ。
今にも泣き出してしまうのではないかと思うほどに。
そのとき、エレンは全てを察知した。
「…お前の…処遇についてだ…」
ほらね、やっぱりそうだ。
「あと、何日ですか?」
「…3日だ」
「そうですか」
エレンは穏やかに笑っている。
とても死の宣告を言い渡されたあととは思えない。
顔がカッと熱くなって、気づけばエレンの胸倉を掴んでいた。
「どうして笑ってんだ…!なあ、もっと怒れよ!お前…どうして…」
「兵長…」
ああ、溢れてしまった。
ずっと耐えていたのに、コイツの前では泣かないと決めたのに…!
リヴァイはエレンの膝の上に崩れ落ちた。