▼企画
□ガラス玉の光
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いきなりのことで、自分でもなにが起きたのか解らなかった。
脚に力が入らなくなって、世界が反転したかと思えば、目の前にはフローリングの木目が広がっていた。
単純に考えるとこうだ。
ハンジから受け取ったカップの中の紅茶を一気飲みしたらこうなった。
あの人のやることといったらいつも自分たちの考えを上回ることしかしない。まさに奇行種。
その奇行種が嬉しそうに感嘆の声をあげている。
「うん大成功だね!わたしの作戦は完璧だ、いデッ!?」
「なにしてやがるクソメガネ!コイツに…エレンになに飲ませた!」
リヴァイがハンジのすねを思い切り蹴り上げた。
床に倒れてしまったエレンが確認できたことはそれぐらいだ。
何故か身体に力が入らない。
それどころか、なんだか熱い。
「イテテ…なに飲ませたかなんて、エレンの状態を見たら一目瞭然だろう?」
「こんなガキに薬なんぞ盛りやがって…一体なんのマネだ」
「いやあ、リヴァイが寂しそうにしてたからさ、わたしからのささやかなプレゼントだよ」
「削がれてえのかてめぇ」
「あ、の……りゔぁ…へいちょ…っ…」
息苦しくてうまく言葉が喋れない。
辛うじてリヴァイの名前を呼んでみると身を屈めて視線を合わせてくれた。
「大丈夫か、エレン」
「おれ…なんか、身体が、熱くて…とけそ…」
現実問題、エレンの顔はリンゴのように朱く染まり、目は焦点があっておらず、手をあげることもままならない状況なのだ。
あやふやな視界の中にずいっ、とハンジの顔が現れた。
「大丈夫だよエレン!結構強いヤツだけど持続性があまりないんだ。だからすぐ効果が切れるはずだよ」
「…え……こうか…?」
「どけクソメガネ、邪魔だ」
「ん、あっ…!」
ベッドに運ぼうとリヴァイが身体を抱き寄せると強く反応し、触れただけなのに余計なほど艶やかな喘ぎを零すエレン。
リヴァイは息を呑んだが、それに負けじと理性を保ちつつ皺一つないベッドの上へその身体を降ろした。