▼企画

□Cantabile
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「…おや、エレンの声が聞こえた気がしたが…一緒じゃなかったのか?」

「外で待たせてある」

「なんでまた」

「アイツは俺の犬だからだ」



なんだそれは、と苦笑いされた。
こんな顔もエレンから見たら魅力的なところの一つなんだろうな。
…会いたがってたもんな、アイツ…。

リヴァイは何故か少し罪悪感を覚えた。



「そんな顔をするくらいなら入れてやればいいだろう?」

「あぁ?」

「いや、なんでもない」



報告書の提出と今後の壁外調査の作戦の確認などを終えて、リヴァイは部屋を出るために扉へ近づいていった。

……ぐすっ……

鼻を啜る音が聞こえた。
扉を開けるとなにかにぶつかった。
下を見ると、体育座りで身体を丸めるエレンが背を向けていた。



「なに泣いてやがんだ、クソガキ」

「…だ、だって、兵長が……ひっく」

「ったく…男だろ、しゃんとしろ」



少し身体を屈ませて自分のスカーフで涙を拭って、頭をポンポンと撫でてやる。



「よしよし…よくできたな」

「……わん…」

「帰るぞ、エレン」



この人は、どうしてこうも飴と鞭の使い方が巧いのだろう。
まるで牙を抜かれてしまったみたいに反抗する気持ちがおさまってしまった。

褒美がエルヴィンに会わせてくれることではなかったのが残念だ。

それじゃあ、兵長は俺になにをくれるというのだろうか?



「まあ…夜になれば解るさ」



なんだろう、嫌な予感しかしない。

その嫌な予感は悉く的中してしまった。



―――



「エレン。おいエレン、起きろ」

「んぁ…リヴァイへいちょ…」



ベッドで横になっていたらいつの間にか寝てしまっていたらしい。
リヴァイに身体を揺さぶられて起こされる。

まだ寝ぼけ眼なエレンは目を擦りながらリヴァイに問い掛けた。
擦るな、と注意されてしまったが。



「…なんですか…」

「褒美をやる、バカ犬」

「ふぇえ?」



すっかり忘れていた。
エレンは慌てて起きあがろうとしたがそれを制されてしまった。



「そのままでいい」



リヴァイはエレンの上で馬乗りになり、シュル、とスカーフを解くとエレンの目にあてがった。



「へ、兵長なにして」

「どうせあのときも、エルヴィンのこと考えてマスかいてたんだろ」

「それは……」



反論できない。
そうこうしているうちにエレンの視界は閉ざされた。
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