▼トレジャー

□崩壊が始まるまでの物語。
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「今日から一年間、お前らの担任をすることになった、リヴァイだ」



運がいいのか悪いのか。俺の担当のクラス、2-Aにアイツがいた。そう、アイツ。翡翠の目をしたあの少年。
始業式のときから相も変わらず俺だけを見つめてくる。しかもそいつは教卓から近い最前列。幸いにも一番廊下側だったが、それでも近いことには変わりない。

…正直、痛い。

そりゃ若くて美人な女教師だったら気持ちは解らなくもないが。生憎俺は男だ。しかも30を越えていて、残念なことに人相だってお世辞にも良いとは言えない。目つきも口も悪く、神経質で粗暴だと同期の人間に言われたこともある。とりたてて今までそれをコンプレックスだと感じたことはないが。
そんな俺なんかを見ていてなにが愉しいのやら。全く持って理解できない。

鬱陶しいほどニコニコしながら視線を寄越してくるそれに無視を決め込みながら話を進めた。



「…取り敢えず、お前らの名前が知りたい。一人ひとり名前を挙げていく。呼ばれたヤツは手を」

「リヴァイ先生、」



人の話を遮るな、そう言いたかった。言いたかったがその言葉は咽の奥へと引きずり戻されていってしまった。
理由は明確。
俺の名を呼んだのは、誰でもないアイツ。

ご丁寧に挙手までしやがったその生徒の名前を名簿で確かめようとするとまたもや遮られてしまった。



「エレンです。エレン・イェーガー」

「……イェーガー…なんだ」

「そんなめんどくさいことしなくでもいいじゃないですか」

「…言いたいことを手短に伝えろ」

「あははっ、冗談キツいなあ」



冗談なんて言った覚えはない。へらへらと笑うその生徒、イェーガーに苛立ちを覚える。眉間に皺を寄せてイェーガーを見据えると肩を竦ませるような仕草を見せた。
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