Abbey Road

□Amusing Memory Of Little Twins
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「二人とも、監督生おめでとう!」

私は自分のゴブレットを持ち上げ、軽く傾けて見せた。

「ロンとハーマイオニーに」

そう言ってワインを一口啜る。

「わたしは監督生になったことなかったな」

このワイン、年代物かしら?とゴブレットの中身を覗き込んでいると、隣からトンクスの明るい声が聞こえてきた。

「寮監がね、私には何か必要な資質が欠けてるって言ったわ」

「どんな?」

焼いたじゃがいもを選びながら、ジニーが聞いた。

「お行儀よくする能力とか」

トンクスの言葉にジニーは笑い、ハーマイオニーは笑うか迷った挙げ句、バタービールを飲んでむせ返っているようだった。

−お行儀よくする能力、ね−

そんなものは自分にだってなかったと思う。
なぜ私が監督生になれたのか、今だってわからない。
ダンブルドアは何を考えていたのだろう。

「ルーピンはいい子だったからバッジをもらった」

背後から大嫌いな声が聞こえ振り返ると、ずいぶんと上機嫌なシリウスがリーマスを肘で小突いていた。

「ダンブルドアは、私が親友たちをおとなしくさせられるかもしれないと、希望的に考えたのだろうな。言うまでもなく、私は見事に失敗したがね」

リーマスは愉快そうに笑い、シリウスに一瞥くれている。

リーマスも監督生だったと知ると、心の中が温かくなった。
別にどうってことはない事実なのに、彼との小さな共通点が私を少し幸せにしてくれた。

まずいな、と思う。
そんなつもりはなかったのに、彼に惹かれている気がする。
騎士団に入って、これからやらなくてはならないことがたくさんあるはずなのに、していることと言えばあの邪悪な黒犬と屋敷で顔を合わせ罵り合うことくらいだった。
荒んでしまいそうな心を、いつも彼が癒してくれるのが大きな支えになっている。

−騎士団に貢献できない焦りが、たぶん私から冷静さを欠いているんだわ−

と、心の中で自分に言い訳した。


「ねぇ、ルーシーは?」

隣から私を呼ぶ声が聞こえ、視線を移すとジニーがいた。
目をきらきらと輝かせたその顔は、どうやら私の何かに期待しているらしい。

「フレッドとジョージがいつも言ってたの。最高の監督生がいるって。誰のことかわからなかったけど、こないだハリーが来た時に、それがルーシーだって気付いたのよ」

「あー、えーと」

何かこの質問から逃げる手はないかと辺りを見回すと、すでに何人かの視線が自分に注がれていた。
参ったなと頬を掻いて、私は曖昧な笑みを浮かべる。

「どんな監督生だったの?僕、参考のために教えて欲しい!フレッドとジョージは監督生になるのはアホだけだ、なんて言うんだ。二人が認める監督生がどんなのか知りたいよ!」

ロンが身を乗り出す勢いで聞いてくるので、私は慌てて頭を振った。


「あなたたちの参考になるような話はできないと思うわ。特にハーマイオニーは気に入らないと思うし。私はあなたたちの誰にもがっかりされたくないの」
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