真珠の耳飾りの恋人

□ぼくの初恋
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[ぼくのはつこいは、きみでした。]


ぼくは何時も一人で父の書斎に忍び込み、本を読んでいた。
本当は立ち入り禁止なのだけれど、ぼくから読書を取ったら何もする事が出来なくなるんだ。
外は嫌い。
運動は好きだけれど、外という存在が嫌い。
だからぼくは、友達と遊びに行くと嘘を吐いて書斎の隅に蹲り、本を抱えてゆっくり、ゆっくり、読み進めていた。
意味なんて分かっていなかった。
お外に出される。
それが怖かった。

丁度良い時間に窓から外に出て、まるで今まで外で遊んできた様に少し履物を汚してから家に入る。
「りんちゃん、楽しかった?」
必ず聞かれるこの質問に、ぼくは子供なりに目一杯の愛想笑いで

「はい。」

と、応えるのだ。
そうすれば、皆嬉しい。
ぼくも嬉しい。


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