SECOND TIMES
□そろわず
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『……………は』
目を擦りながら起きる
見渡すと知らない部屋であることが分かる。思い出す感覚は織姫の一件。
『和室…』
私が寝ているモノは布団であり、床は畳み天井は木目調だ
スススー と襖が開く
「あっ。目、覚めたんですね」
入ってきたのは小学生くらいのツインテールの女の子。
なんとも垂れ目が可愛らしい。
『ここは…』
「浦原商店です」
『浦原商店?』
聞き覚えのない名前。
そんな店あったのか。
「今呼んできますね!」
何を?と聞く隙はなく、タタタタと走って出ていってしまう。
「………ん」
頬に何か付いてる感触。
手で触れてみるとどうやらシップの様。あ、そーいや昨日殴られたんだっけ。何でかは分からないけど。
そう思うとなんか怒りが芽生えてくる。なんであの野郎殴ったんだ?ちょ、私にも殴らせろ。
「おはようございます…椎名サ……いえ、椎名と呼ぶべきだったっスね」
えっと……?
私の名前を呼びながら入ってきたのは、緑と白のボーダーという珍しい柄の帽子を被った男。微かに帽子の隙間から見える双眼は優しげに細まれている。
悪い人…じゃないよな。多分看病してくれた人だろう。ま、悪い人だった時は逃げよう。
「…怪我はどうです?」
『怪我……ああコレ。大したこと無いのにすみません。貴方が看病してくれたんですよね』
「…………」
『あれ…違います?』
……アレ?私、なんか不味いこと言ったかな…
男の優しげな瞳が途端に険しいものに替わり、帽子の陰に隠れる
「もしかして…覚えて無いんですか」
男から出たのはどこか悲しげな声
『…昨日の事は一護が勢いあまって三回転んでて痛そう、と思ったところあたりまで覚えてますけど…それ以降は…。そういえば何時気を失ったんだろう…おかしいな…思い出せないや』
頭のすみから隅まで思考を巡らせるが見つかることはない
「………」
『あの………?』
「いやあ!すみませんねェ!アタシは浦原喜助っていう者です。朽木ルキアさんの…お友だちですかね」
途端に顔を上げ先ほどとはうってかわって明るくなる男…杏、浦原喜助
『ルキアさんの?』
「はい!先日の廃病院で色々ありまして…一時的に椎名さんをこちらで保護していたんですよ」
嘘、ではないだろう。
『…そうだったんですか。それは、そのありがとうございます』
頭を下げる
「あいえいえ。困ったときはお互い様ッス」
そう言う浦原さんの表情は帽子で隠れ、分からない…けど
『あの……私が言うのもなんですけど』
「はい?」
『悲しそうな顔、しないで下さい』
「!!」
浦原さんの動きが止まる
『貴方のそんな顔見たくないというか…わかんないんですけど……て、初対面で言う台詞じゃないですね。ましてやこっちは助けて貰ったのに』
「ハハ…まったく…貴女って人は……。…」
『?え』
何か言ったみたいだが聞き取れなかった
「いえ、なんでもないッス。さて、半日寝ていてお腹も減ったでしょう!今何か持ってきます」
浦原さんが誤魔化したことよりも、もっと重要なことがあった
『は、半日!?今、何時ですか』
「もうすぐ午後1時ッスね」
『………学校に連絡入れてない』
ヤバイ。無断欠席は流石に怒られる。当たり前だが、怒られるのは好きじゃない。
「それなら朽木さんが伝えてると思いますよ?」
『あ、そっか』
冷静に考えればそうだ。それに、一護もいるし大丈夫だろう。
「それじゃ、ちょっと待っていて下さいッス」
『あいえ!もう大丈夫なので帰りますよ。怪我っていっても頬ですし』
「待っていて下さい」
その声はおどけた明るい声じゃない。真のある、少し強い声。
「もう少し、そこに居てください」
そう言う浦原さんに、私は頷くしか出来なかった