SECOND TIMES 番外編

□初夏の日
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「ここまでくればええやろ…」
『………えと、なんでここ?』

甘味処から連行された私はなぜか十二番隊に来ている。

「なんでって……何でやろ?」
『久南さんかキミは…。多分慣れ親しんでるから自然と足が行ったんじゃないか。来たついでに、なんかお菓子ないの?団子若干食べそびれたし』

誰かさんのせいで。とは言わない。

「あることには多分ある」
『なにその曖昧さ』

ひよ里ちゃんに手を引かれ、そのまま隊内に入る。
途中すれ違う隊員たちに軽く挨拶。皆そんな腰低くしなくてもいいのに。すれ違った隊員は皆、割烹着のような服装。技術開発局、十二番隊ならではの光景だな。

ひよ里ちゃんがある部屋の前で止まる。

『ここ?ここにお菓子が?』
「一応な…オイ!起きんかい!!」

ひよ里ちゃんは叫んだと思ったら戸を蹴飛ばしている。あらあら、女の子がはしたないぞ?と言いつつ楽しそうなので私も参加。

ドンドンドン ガタッ あ、外れた。

「………騒々しいモーニングコールッスね」

むくっと起き上がった影は、十二番隊隊長浦原喜助。寝起きよろしくあくびをしている。それから、モーニングと言うにはもう遅い。

「喜助ェ!菓子どこや」
「菓子?お菓子ですか?それならそこに…て、椎名さんじゃないスか」

驚いているような反応の喜助さん。はてさて、本当に驚いたのかは定かではない。

『どーも、喜助さん。何度も言うようですが私の方が全然年下なんですし、呼び捨てでいいですよ』
「なら。何度も言うようスけど、椎名さんが僕のこと呼び捨てにしてくれるならいいっスよ」

そう笑う喜助さん。この人はなかなか食えない人だ。何考えてるかもよく分からない。でも嫌いな人ではないから、仲は良好だと思いたい。

「って賞味期限切れてんのばっかやないかァ!!食えるか!!」

ひよ里ちゃんが饅頭のようなものを床へ投げつける。見ると明らかにカビが生えている。うん。流石に食べたくないな。舌がぬるってしそうだぜ。あと胃がぎゅるっと。

「あれ?切れてました?」
「しーな!いくで!」

喜助さんの言葉は無視し、ひよ里ちゃんは部屋を出ていく。結局ここに何しに来たんだか…まぁ楽しいからいいのだが。

『りょーかい。んじゃ喜助さん、ひよ里ちゃんは借りていきますよ』
「もう既に借りてるじゃないッスか」
『ああ、そうだった。では失礼します』
「あ、椎名さん」

ひよ里ちゃんの後に続き出ていこうと思ったら呼び止められた。

「今度、ご飯でもどうです?」

ご飯…ご飯か。少し考える。

『…奢ってくれるなら行きますけど』

私の答えが意外だったのかは分からないが、驚いた顔をする喜助さん。それからいつもの笑みに戻る。

「それじゃあ、休みの日は言ってください」
『基本毎日休みです』
「それ、アナタがサボってるからでしょう。…たまには仕事したらどうッスか?さっきから椎名さんたちを捜してますし」

平子さんみたいなこと言うなぁ、と思う。……ん?"さっきから"と言う言葉に引っ掛かる。まぁ確かに周囲に部下の霊圧はあるが、近くには……知ってる霊圧が一つ。

『………これ、平子さんだ』

「そーやけど……嫌な予感がすんねん」

先程のひよ里ちゃんの言葉が頭によぎる。

『………アレ?やーな気が』
「ぎょわああああ!!」

嫌な汗が伝った直後叫び声。ひよ里ちゃんのだ。

「ひよ里サン、捕まっちゃったみたいッスね」
『……そうみたいッスね』

平子さんがひよ里ちゃんを捕まえた様だ。ここからでも二人の言い合いが聞こえてくる。
私はどうしよう……逃げるか…逃げないか。いや、どちらにせよひよ里ちゃんが捕まった以上、鬼ごっこは私たちの負けか。

「アレ?逃げないんです?」
『今回は私の負けなので素直に投降しようかと』

両手をあげて降参のポーズ。

『えと、じゃあ。食事の件は承知しました。また今度』
「えぇ」

私はその場を去った。



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