鬼と小鬼
□プロローグ
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まだ武州にいた頃。
俺は雨の中、銀色の髪をした少女を見つけた
年は七、八歳くらいでまだ幼い
「…何やってんだ?」
少女は振り向くことなく答える
『…刀を新しいのにかえようとおもって』
そう少女の手には、容姿と似つかわしくない刀が握られていた
それも、血が変色して茶色にこべりついている
「………」
そして“新しいの”と言って手を出しているのは死体だった
『今はせんそうでここら辺はよく人が勝手に死んでるの。もちろん、天人もいるけど』
そう言い、少女は死体の中からお気に入りの刀を探していく
『だから楽なんだ』
殺す必要がないから、と少女は続ける
「そうやって生きてんのか…?」
『みんなみたいに死ぬのは嫌だから』
そこで初めて少女がこちらをむく
少女の赤色の瞳が、こちらを射ぬく様に真っ直ぐ向けられた
『お兄さんのはやさしい目だね』
そう無邪気に笑う姿は、噂の小鬼とはかけ離れていた
……