SECOND TIMES 番外編
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なんだろう。
なんか一護、機嫌悪い?
私が話してからというもの、一護は怖い顔で黙っている。
私、何か言ったかな… と考えてみるが思い当たる節は特にない。
折角、話が切り出せると思ったのに。
喜助さんを使って話し、さりげなく言う予定だったのだが相手に遮られてしまっては仕方がない。ここまでタイミングが掴めないなら…いっそ諦めるか?
「…さっき何て言おうとしてたんだ?」
悩んでいると一護から声がかかる。しかもそれが悩んでる内容だったため、思わず肩がビクッと跳ねた。
『あー、んとさっき。うん、さっきね』
明らかに動揺していることに自分も気づく。
どうしよう、言ってしまおうか。その方が楽だ。楽、だけど。
「…浦原さんの話か?」
『え?いや、違うけど…というか喜助さんの話はついでで』
「ついで?」
一護の目が私を見る。動揺するな私!言えばいいだろ!そう、一言!
『い、一護!』
「お、おう」
『…一緒にケーキ、食べない…ですか?』
ああ、言ってしまった…。しかも言葉変だし。
言われた本人は、おそらく顔が赤いであろう私を豆鉄砲でも食らったように驚いて見ている。
それがまた、顔に熱を集まらせた。
「一緒…に?俺が、椎名と…?」
『いやさ、その。私一人だから、ケーキ一人だと虚しいっつーか…別に一人でも食べれるけどさ、うん、一人よりも二人の方が……なに笑ってんの』
「いやっ!、なんでもねぇ、よ!」
一護は声をあげて笑っている。それも腹を抱えて。
『…今のどこに笑う要素があった』
「くっ、いや、こっちのことだからっ」
『あーもう笑うなって!…で、食べるの食べないの!』
「その、食べるのって」
『私の家、アパートだけど不満かい?』
「い、いや」
一護はまた何か思うことがあるようだが、一先ずは機嫌は治ったみたい。
『あ、因みにさっき話してたクリスマスのことだけど。喜助さんがここの商店街はクリスマスも凄いって言ってたから、一護よかったら一緒に行く?って言おうとしてただけだから』
「………」
『まぁでも、よくよく考えれば一護は家で家族と過ごすのかなぁーって今思った。それが機嫌悪くさせてたならあやまる、ごめんなさい』
思えば私は一人だが、一護には家族がいる。私はそこまで考えてなかった。
「…そうじゃねえよ」
『……じゃあ』
「そうじゃねえけど。…そのクリスマス出掛けるのと、今日一緒にケーキ食うのでチャラだ」
驚く。一護の言葉は予想していなかった。
『いいのか?』
「いいもなにも…」
後ろの言葉は小さくて聞こえなかったが、聞き返す前に一護はお客さんの所へ走っていく。その足取りは軽い。
なんだいきなり…。
目付きの怖い顔も、幾分かましになっていた。というかなんか嬉しそうだ。
嬉しそうな原因は分からないが、さっきの機嫌よりかはいいだろう。
『…よくわかんないけど、私も頑張らないとな』
いらっしゃいませ!
と声を張り上げた。
「いいもなにも…俺には断る理由がねえよ…」
ほんと、読めない。
読めなくって、振り回される。
…でも別に嫌じゃない。
胸に渦巻いていた嫉妬心は既に消えていた。